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永続的なチャリティーブランドを目指す 「Jammin」

チャリティーと日本製とファッション。この3つの要素が鼎立できているブランドは数少ない。ジャミンがそれを鼎立できるだろうか?アパレル・ファッション業界に染まっていない運営の3人だからできることがあるのかもしれません。

March 6 2017 , Column

国内で流通している衣料品類の97%はアジア地区をはじめとする海外生産品であり、国産品は3%程度しか存在しない。にもかかわらず、近年は衣料品業界で、有効な販促手段の一つとして「国産」と目される。また、他方では繊維製品の国内製造加工業者の自立化が急務だとされており、オリジナルブランドの国産衣料品が数多く生まれたことも事実である。またエシカル(倫理的)ファッションを掲げて、そういう国産品とのジョイントを試みるブランドもいくつか出現している。

しかし、残念なことに、それらのブランドの中で商品デザインがカッコよくないものが少なくない。それはデザイナーの起用にミスマッチがあったり、デザイナーを起用せずに製造加工業者自らが素人デザインで間に合わせてしまったりするためである。

だから国産品やエシカルファッションの中にはファッション商品という観点からは購買意欲をそそられないものも少なくない。

ジャミンの3人

 

「JAMMIN(ジャミン)」というチャリティーブランドからコンタクトをもらった時、正直にいうと、その手のイケてないエシカルファッションブランドが頭に浮かんだ。しかし、来るものは拒まず去るものも追わない主義なので、とりあえず、お会いしてみることにした。お会いしたのは広報を担当している高橋佳吾さん。

高橋さんを含めた3人でブランドを運営しているという。プリントTシャツが主力商材で、自社ネット通販と、小規模専門店への卸売りが主要販路。Tシャツの価格は税込み3400円で、1枚売れるごとに700円がチャリティーとして寄付される仕組みになっている。3400円でありながら、日本製。プリントされるグラフィックは実は毎週変わり、過去の柄はよほどの要望がない限りは再販されない。

そういうシステムで販売されており、ある程度理には適っている。よくあるような理念先行のチャリティーブランドとは一線を画しているといえる。

ジャミンのTシャツ

主力である自社サイトでTシャツの注文が入れば、そこからシルクスクリーンでプリントを刷る。現在の大手ネット通販のような迅速さには到底及ばないが、運営の規模を考えると受注されるごとにグラフィックの柄を自分たちでプリントすることがもっとも在庫リスクが少ない。

それにしてもチャリティーとして1枚あたり700円を寄付すれば、正味のTシャツの値段は税込みで2700円になる。日本製は一般的に、中国を含めたアジア製よりも工賃が高いので、2700円に収めるのはなかなか難しい。しかしTシャツという商品はこれ以上の高価格には設定しづらい。

そこで、どのようにして製造原価を抑えているかというと、無地のTシャツをあらかじめ何百枚か製造しておいて、ストックしておく。そして受注に応じてグラフィックの柄をプリントして出荷しているというわけである。

無地Tシャツのストック

衣料品業界に詳しい人にとっては当たり前のことだが、通常の衣料品はオーダースーツのように1枚だけの受注で製造されることはない。縫製は流れ作業で行われるためだ。通常の衣料品は縫製工場にもよって異なるが、1型100枚とか1型50枚とかという最低生産数量(ミニマムロット)が決められている。これを上回れば1枚当たりの縫製工賃は安くなるし、下回れば高くなる。だから、1枚とか2枚しか生産しない場合の工賃は何千円、何万円という金額になる。

実は生地においてもこのミニマムロットは存在する。各生地工場の設けたミニマムロットを上回れば1メートルあたりの生地値は安くなるし、それを下回れば割高になる。洋服も家電や生活雑貨など他の工業製品と同じ仕組みで原価が決まるのである。

ジャミンはこのミニマムロットをクリアする形で無地のTシャツをあらかじめ作り置いて製造工賃を引き下げている。まあ、アパレルビジネスでは基本的な手法なのだが。

 

ジャミンのTシャツにはもう一つ大きな特徴がある。それは「売り物」であるグラフィックの柄がファッショナブルにアレンジされている点だ。すべての柄は社会問題をモチーフとしているが、いわゆる説教クサイ図柄ではなく、それをファッションっぽくアレンジする。これによってチャリティーTシャツに「ファッションアイテム」としての顔を与えることになる。

シルクスクリーンでプリントしている様子

 

ジャミンは高橋さんと西田太一さんが二人で始めた活動で、そこにグラフィックのデザインを担当する日高啓寛さんが加わった。高橋さんと西田さんはもともとアパレル・ファッション業界の出身者ではない。

高橋さんと西田さんは、それぞれ別々の大学院で「途上国の水問題」を研究。卒業後、街づくりやインフラ計画をメインとする大手コンサルタント会社に同期入社した。そこで意気投合して、2013年に合同会社を立ち上げて、自分たちにとってまったく未知の分野であるチャリティー向けのアパレルビジネスを開始した。ECサイトの立ち上げは2014年のことである。

高橋さんによると、当時、同じような考えをもってスタートした他社のチャリティーアパレルブランドが2つ・3つあったという。しかし、いずれも実質的に活動を停止しており、活動が継続できているのはジャミンだけになった。いくらチャリティーとはいえ、最低限度の収益が確保できなければ活動を継続することはできないから、そういう観点からするとジャミンの仕組みは正しかったといえる。

ECサイト開設からこれまでの2年間強でのTシャツ累計販売枚数は約1万3000枚を越えた。

かつて流行ったホワイトリストバンドのように、一瞬ブームになるチャリティー商品が現れることがある。しかし、それはホワイトリストバンドも含めて永続的なビジネスではなく一過性で終わることがほとんどである。

姫路のレザーで作った小銭入れ

高橋さんと西田さんは、永続的なビジネスを目指しているので、グラフィックプリントTシャツ以外の商材の開発にも取り組んでいる。2016年秋冬はスエットパーカを発売し、かつてはレザーの小銭入れやキーホルダーを発売したこともある。現在はマグカップや組紐のブレスレットなどの試作を繰り返しており、どの商品も日本製だ。小銭入れやキーホルダーのレザーは、レザーの産地である兵庫県姫路市から仕入れていた。

チャリティーと日本製とファッション。この3つの要素が鼎立できているブランドは数少ない。ジャミンがそれを鼎立できることに期待したい。アパレル・ファッション業界に染まっていない運営の3人だからできることがあるのかもしれない。業界に染まり切ってしまった初老のぼくにはそう思えてならない。

Text: Mitsuhiro Minami
Picture: Mitsuhiro Minami

Data

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ジャミン合同会社

京都府京田辺市大住池ノ谷45-1
TEL 0774-27-4700
info@jammin.co.jp

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