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ファッションはサブカルチャー

他のサブカルチャーと結び付けて新しい切り口で見える。ファッションではなく、バイク乗りというスタイルを販売する「アイアンハート」。

May 23 2017 , Column

老若男女に幅広く着用されているカジュアルアイテムの一つにジーンズがある。ところが昨今はジーンズの生産本数が減少していると報じられることが増えた。しかし、ジーンズの国内市場での売り上げ量はそれほど大きくは変わっていないといわれる。では生産本数が減少した理由はなんだろうか?それは生産統計をまとめている日本ジーンズ協議会が生産本数を把握できるブランドの数が減ったということである。実際に日本ジーンズ協議会はここ2~3年間、ジーンズの生産統計の発表をとりやめている。

かつてジーンズは専業メーカー何社かが寡占化しており、その専業メーカーは協議会に所属していた。このため、ジーンズ協議会は正確にその生産本数を把握することができた。

風向きが変わったのは90年代半ばのビンテージジーンズブームからではないかと思う。このとき、主にビンテージ風のレプリカジーンズを自主企画する小規模な新興メーカーが数多く生まれた。その中にはエヴィスやシュガーケーンのように今も残っているブランドもあれば早々に市場から退場したブランドもある。

このころから、ジーンズは大手専業メーカーだけのものではなくなりつつあり、その後「ユニクロ」や「無印良品」などのSPAブランドも「ポールスミス」のような百貨店ブランドもこぞってジーンズを自主企画生産するようになった。これらはすべて協議会に非加盟であるため、正確な生産本数が把握できなくなり今に至るというわけである。しかし、それら非加盟ブランドすべてを合計するとその生産本数はほとんど以前とは変わっていないと考えられる。

かつての大手専業メーカーの苦戦や経営破綻が伝えられる中、ブランド数は逆に膨大に増えたジーンズだが、供給過剰の側面があり、各ブランドは売り方に様々な工夫を凝らさなくては売れなくなった。今回はその中の一つのブランド「アイアンハート」の取り組みを見てみたい。

大阪店外観

今年5月3日に「アイアンハート」の大阪店がオープンした。ブランドの直営店では3店目となる。本店は東京の八王子、2号店は岡山県の児島でそれに次ぐ3店目ということになる。場所は東大阪市高井田西という辺鄙な場所にある。大きな幹線道路沿いの路面店なので、少なくともファッションブランドが出店したがる場所ではない。どうしてこのような場所に路面店を出店したのか。

社長の原木真一さんにその理由を尋ねた。

原木真一社長

「バイク×ジーンズというコンセプトのブランドなので、大型バイクの乗り入れがしやすい幹線道路沿いを選んで出店しています。ファッションという売り方もしていませんから都心のファッションスポットに出店する必要がないのです」との答えだった。

そう、アイアンハートの一番の特色はその「売り方」にある。学生時代から大型バイクに親しんできた原木社長は、2003年のブランド立ち上げ時にブランドのコンセプトを「バイク乗りが求める機能性・耐久性を持ったジーンズカジュアル」と定めた。耐久性を求めてジーンズに使用する生地は通常のデニム生地よりも厚い21オンスを標準とした。通常のジーンズに使うデニム生地は13~14オンスで、昨今では軽量化が求められて11~12オンスが標準となっているから、いかに厚いデニム生地でがっしりしているかがわかる。定価はレギュラーストレートが18,000円で、それ以外はすべて2万円を越えるが、裾上げは当然のことながら、腿や膝が破れた場合の修理も永久に無料で行うというサービスを付与している。

21オンスレギュラーストレートジーン

サイズはXSからXXXLまでと幅広い体型に合わせている。看板商品のジーンズ以外にもTシャツ、カジュアルシャツ、ブルゾン、コートなどトータルアイテムがそろう。もちろん、すべてのアイテムが肉厚で耐久性に優れている。Tシャツは7・5オンスの超肉厚生地を使用、ブルゾンやコートなどの防寒着は撥水機能を付与したものが多い。生地はすべて別注で縫製は国内工場。

それにしても設立14年を越えるブランドでありながら、これまでファッションメディアでその名を見かけたことがほとんどない。理由を原木社長に尋ねると、

「ファッション雑誌やファッション系のメディアに一切広告を出稿していませんからね」という。それではどのように広報告知活動を行ってきたのだろうか。

「バイク雑誌に広告出稿し、バイクのディーラーのイベントに参加して広報告知活動をしてきました」とのことだった。

レジ台の後ろのジーンズ陳列棚

 

衣料品ブランドでありながらこうした売り方は異例といえる。そもそもどうしてコンセプトを「バイク」に絞ったのだろうか。

ブランドを設立するまで多くのジーンズカジュアルブランドに企画担当者として契約してきた原木社長だったが、2000年ごろからジーンズ専業メーカー大手に停滞の兆候が見え始めたことから、「ジーンズカジュアルを単なるファッション性や商品のスペックで売ることは難しくなる」と感じたという。

「ファッションはもうメインカルチャーではなくなりサブカルチャーになる」との見通しから、同じくサブカルチャーであり、学生時代から親しんできたバイクとの組み合わせによるブランドコンセプトを設定した。「ファッションが若者のメインカルチャーだったのは90年代で終わり、2000年以降はサブカルチャーになっています。例えば今、有名ブランドとアニメや漫画のコラボ商品が頻繁に売り出されていますが、それは洋服がサブでアニメや漫画がメインだということの証明です。ですからアイアンハートはサブカルチャー×サブカルチャーで、ファッションを売らずに『バイク乗り』という『スタイル』を売ることにしたのです」。(原木社長)

店内風景2

そのおかげもあり、現在の国内顧客層はバイク乗りが7割でジーンズ好きが3割という構成で、年商規模や約7億円になった。その中でも海外での販売も好調で、年商のうち半分弱が海外での売上高となる。卸売り先は国内110店舗、海外では17か国だ。

原木社長は「欧米では何年か前から日本のジーンズブランドが注目されてきましたが、数年前からアジア地区でもジーンズ人気が高まり、日本のジーンズブランドも注目されています。そのおかげもあり欧米プラスアジアでの売り上げが伸びています」という。海外での顧客層はジーンズ好きが8割・バイク好きが2割となって国内顧客層とは逆の構成になっているのも興味深い部分ではある。

「バイク乗りという『スタイル』を打ち出し、バイクディーラーのイベントで販売するという『コト販売』をブランド設立当初からやってきましたが、昨今のマクロな流れを見ているとうちの方向性は正しかったと確信を深めています」と原木社長。たしかに近年、百貨店や商業施設ではアイテムそのものの「物販売」に行き詰まり、「コト販売」が重視されており、ある意味で時代を先取りしていたといえる。

オリジナルのTシャツとポロシャツ

 

作業着として生まれたジーンズはファッション商品に変貌することで爆発的に売上本数を増やした。しかし、他ジャンルのファッションブランドがジーンズに進出してきたことで逆にファッション性という切り口で苦しめられ専業メーカーの衰退を招いた。しかし、原木社長は「実はジーンズ業界にはチャンスだと思うんです。なぜなら、ジーンズの新しい切り口を提案した企業やブランドは売れているからです。スキニーという新デザインを打ち出したブランドは支持されましたし、ファッション性+低価格を打ち出した「ユニクロ」は年間販売本数が1000万本以上になっています。ですから、新しい切り口を提案できれば新しい需要が獲得できるチャンスだと見ています」という。さて、今後どのような新しい切り口が提案されるのか、期待してみたい。

Text: Mitsuhiro Minami
Picture: Mitsuhiro Minami

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IRON HEART

古きよきアメリカのLIFE STYLEに尊敬と憧れを込め、そこに私達のクラフトマンとしての誇りと技術でバイク乗りの為のアイテムを作ります。
「古くて新しい、ゴツくて強靱」いつの時代にも左右される事のない質実剛健をテーマにモノ作りをスタートさせました。

URL:www.ironheart.jp

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