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プリーツ加工生地を使った自社製品の企画製造販売を手掛けるYS企画

合成繊維を熱加工によってヒダ状に形状を固定するプリーツ加工。日本ではもうわずかしか業者はありません。企業が生き残るとはどういうことでしょうか?新規販路開拓や新商品開発を自らの手で行える「自立化」した製造加工業者である株式会社三協とYS企画を訪問してきました。

February 20 2017 , Column

スカートなどで使用されるディテールの一つにプリーツ加工というものがある。合成繊維を熱加工によってヒダ状に形状を固定する加工のことである。基本的には天然繊維は加工しても洗濯をするとそのヒダは取れてしまうので固定化できるのは、合成繊維に限られる。ところで、このプリーツ加工を施す加工屋、プリーツ加工機を製造する機械メーカーは国内から年々姿を消し続けている。とくにプリーツ加工機メーカーは国内には1社しか残っていないのが現状である。

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プリーツ機械メーカーでありながら、プリーツ加工も請け負う三協と、プリーツ加工生地を使った自社製品の企画製造販売を手掛けるYS企画は京都市にある。機械メーカーだった三協が、機械製造だけでなく、プリーツ生地加工そのものを請け負うようになったのは、国内のプリーツ加工屋が減少の一途をたどっているからだ。

プリーツ加工を国内で行うブランドが減ったことから、加工屋が減少。加工屋が減少したことで機械メーカーも減少した。国内で現在残っているプリーツ機械メーカーは創業50年を越えるこの三協だけになってしまった。

そこから新たな道を模索して、プリーツ加工生地を使った自社製品の企画製造販売部門として別会社のYS企画を立ち上げた。YS企画は三協の清水利之社長のご夫人である清水友子さんが社長を務める。

ぼくがYS企画を見知ったのは、5年くらい前に行われた繊維の製造加工豪奢を集めた合同展示会だったと記憶している。その時に初めて、三協とYS企画という会社を知り、プリーツ加工機メーカーがもう三協だけしか日本に残っていないことも知った。プリーツ加工というジャンルも、織布やニット、染色加工などの他分野に負けず劣らず大変な状況に陥っている。

 

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三協の清水利之社長は2代目。創業者は清水社長の父親である。清水友子社長はそこへ嫁いできた。清水友子社長は「ここに嫁いできたころは景気の良い時代だったが、30年くらい前から徐々に加工場の海外移転が始まり、国内の業者は苦しくなっていった」と振り返る。そのころ、ちょうど社屋を新築したばかりで内部留保が減ってしまったため、他社に比べても厳しい状態だったという。

加工機械が売れなくなり始めていたので、30年くらい前から三協としては生地加工も請け負い始めた。

清水友子社長によると「当時、国内のプリーツ加工業界はそろって厳しさを増していったが、他社は景気の良かった時代の内部留保で持ちこたえていることができたが、うちは社屋の新築によって内部留保がかなり減っていたので、新規販路の開拓と新商品開発と販売を地道に続けることで何とか生き残りを模索し続けてきた」という。

その結果が徐々に成果を結び始めて、何とか危機を脱することができたが、他社は縮こまって内部留保で凌ぎ続けているうちに内部留保もなくなり、持ちこたえることができなくなった。その結果が、現在に結びついているということになる。清水友子社長はその当時を「本当に苦しかった」と感慨深げに振り返る。

新規販路開拓や生地の請負加工を増やすことにも限界が見えつつあった10年ほど前、自社オリジナル製品の企画製造販売を手掛ける新会社としてYS企画を立ち上げた。機械を購入してくれた先や取引先との競合を避けて、プリーツ加工生地を使った洋服の企画製造販売はせずに雑貨類に特化する。2013年から毎年、単独出展ではなく、商工会議所やプロデュース業者のセレクトによるグループ出展だが、フランスの展示商談会「メゾン・エ・オブジェ」にも出展を続け、2017年1月の出展で5回目となる。毎回引き合いは多いが、成約に結びつくことは少ない。しかし、清水友子社長は「海外との取り組みの先行きを見極めたい」と前向きだ。

三協は現在、国内でプリーツ加工生地を扱うほとんどの衣料品ブランドとは何らかの形で取り引きがある。プリーツで有名なあのブランドももちろん取引先の一つだ。近年は衣料品業界だけでなく、ブライダル産業、建築や建設、インテリア分野からの依頼も増えている。プリーツ加工の技術を生かした壁紙やカーテン、椅子張り生地などのほか、網戸や屋根瓦を乗せるミチビキなどの受注もある。国内を代表する有名建築家から直接のオーダーも増えており、まさに残存者メリットを享受しつつあるといえる。

 

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国内の繊維製造加工業者をめぐる環境は厳しさを増すばかりで、倒産・廃業が相次いでいるし、これからも続くことが予想される。「国内の繊維製造加工業者を守れ」という声がファッション業界の一部やメディアからは聞こえる。それに対して行政は各種の補助金や助成金を拡充しているが、個人的には今の全業者が生き残ることが果たして正しいのかどうか疑問を感じる。なぜなら、これまで、繊維の製造加工業者の多くは、大手から自動的に発注をもらう下請けとしての立場に甘んじてきた。販路開拓営業すらしたことがない業者も多い。そんな下請け体質が染みついたままの業者をすべて救済する必要があるとは、申し訳ないが思えない。

今回の三協とYS企画に限らず、これまでこのコラムで取り上げたような新規販路開拓や新商品開発を自らの手で行える「自立化」した製造加工業者は大いに支援すべきだが、自らアクションを起こすことさえ考え付かないような業者は、たとえ少しの期間延命させたとしても、いずれは立ち行かなくなることは目に見えている。

国内衣料品市場も苦戦傾向にある今、下請け気質が染みついた製造加工業者を保護して生き延びさせることは、逆に競争力を弱めることになるのではないだろうか。

Text: Mitsuhiro Minami
Picture: Koichiro Sato

Data

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有限会社YS企画

〒615-0846
京都市右京区西京極堤外町10番地-6
TEL:075-322-5260
URL:www.ys-kyoto.jp

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株式会社三協

〒615-0846
京都市右京区西京極徳大寺団子田町82   
TEL  (075)313-3410            
FAX (075) 322-5261

URL:www.sankyo-ys.co.jp

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