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縫製工場からブランドを目指す

レザーバッグ縫製工場の「ふく江」はもともと下請け縫製工場だった。業務の拡大を図り、OEM専門の工場へと転身。さらに自社ブランド立ち上げでは原料の直接仕入れに踏み切った。逆境に対してポジティブシンキングで立ち向かう「ふく江」のあきらめない精神についてお話を伺ってきた。

September 28 2016 , Column

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付き合い始めて6年くらいになるが、工場を覗くのは初めてになる。

今回は大阪・和泉市のレザーバッグ縫製工場の「ふく江」にお邪魔した。もともとはレザーバッグの下請け縫製工場だったが、2009年ごろに自社ブランドを立ち上げた。実は2010年ごろに「ふく江」を運営する福江光洋さんとは知り合ったのだが、今から思い返してみると、まだ自社ブランド「アルティジャーノ」を開始したばかりの時期だったということになる。

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レザーバッグの業界は、まずブランドがあって、そこの製造を請け負う協力工場がある。ブランドが自社縫製工場を持っている場合もあるが、それはアパレル業界と同じで少数派である。協力工場だけでは製造が追いつかない場合があるので、そういう場合は協力工場がさらに下請け工場を使う。もともとのふく江の立場はこの下請け縫製工場だった。

ファッション衣料は一部の超大手を除くと、成熟化によって多品種小ロット化が進んでいる。レザーバッグも同じ傾向で15年前から徐々に多品種小ロット化が進んできたという。型数が絞られて1品番当たりが大量に作られていた状況から、型数が増えて1品番当たりの生産数量が年々減少しているのが今の状況で福江光洋さんは「15年位前は3型のバッグを製造すると1年が過ごせていたが、それが徐々に年間10型になり20型に増えていった」と、この間の状況変化を説明する。

下請けとしての仕事も減少傾向にあったことから10年前というから2006年ごろに思い切ってOEM専門の工場へと転身を図った。勝手に転身しても仕事があるわけではないため、その当時の得意先ブランドからの確約を得ての挑戦だった。しかし、その確約はいとも簡単に裏切られてしまう。ブランドも自社で製造機能を強化してしまったために、転身後いきなり得意先がまったくなくなってしまうという事態に直面した。

まだ下請け縫製の仕事は少し残っていたが、ここで大きな決断をする。思い切ってオリジナル製品化を進めたのである。これに伴って、原料となる革も姫路のタンナーから直接仕入れることでコストを下げることを選択した。

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皮革という分野も特殊で、原皮をタンナーがなめして皮革にする。通常、タンナーが直接ブランドやバッグメーカーに皮革を卸すことは多くはなく、その間には問屋が介在する。多くの場合、タンナーは問屋との交渉・折衝のみで、ブランドやバッグメーカーとは直接の面識がない。ふく江は自社オリジナルブランドを立ち上げるにあたってここの取引形態を変更した。関西では兵庫県・姫路周辺が革の産地でありタンナーが集積している。

福江さんは定期的に産地に出向いてタンナーと直接話し合うようにしているが、なかなか一定の品質の革を複数枚調達するのは難しい。なぜなら、革はもともと牛や馬など1頭あたりから1枚しか取れず、しかも動物であるため個体差がある。同じ品種でも体の大小だとか脂分の多い少ない、などがあり一定の品質にはならない。同じようになめして染色しても色がブレたりムラが出たりするからだ。さらに体表に傷が多い個体とそうでない個体の差があり、傷が多すぎると皮革としては使い物にならなくなる。

そういう、傷が多すぎて使い物にならない皮革が生産されてしまうと廃棄するか細切れにしてアクセサリー類の部品に使用するくらいしかない。かつては革問屋から購入していたため、こういう不良品を仕入れずに済んだが、タンナーと直接取引をしているため、不良品を誰が引き取るのかは大きな問題となってしまう。現在はふく江が不良品も込みで買い取っているが今後はその活用法を考える必要がある。

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原料を直接仕入れることでオリジナルブランド「アルティジャーノ」を開始したが、思ったより順調な滑り出しを見せたが、福江さんは振り返って「7年前だから何とか始めることができた。今の状況なら同じようには始められていない」と指摘する。やはりレザーバッグという分野も年々商況は厳しくなっているそうで、その理由として地域一番店のバッグ専門店が年々弱っており、7年前とは比べ物にならないほどだという。バッグはアパレルほどの値崩れがいまだにないが、それでも徐々に地方専門店が疲弊しつつある。

ふく江ではレザーだけではなく、ミシンの特性を生かして厚手生地を使ったバッグ、財布類の製造も開始した。2013年には国内第2位のデニム生地メーカー、クロキとのコラボバッグをアルティジャーノとして開発した。クロキが作る最重量の28オンスデニムと、厚さ6ミリの革を組み合わせたバッグでいまだに人気定番商品として一定量が売れ続けている。

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福江さんは「現在のOEM生産を主軸にしながら、自社製品販売比率を4割にまで高めたい。4割到達はなかなかですけど」という。工場は現在、17人製造スタッフがいて、毎月300~350枚くらいの皮革を使用する。

自社ブランド立ち上げから7年が過ぎて「見様見真似でブランドを始めたがやっといろいろなものがつながり始めた」と福江さんはいう。販路拡大を目的にこれまで様々な合同展示会に出展してきたが、2016年はいったん出展を休止して、ブランド展開の構想を練り直している。アルティジャーノの強みは本格的なレザーを使用しているにもかかわらず3万円未満でおさまる割安感にある。

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しかし、高品質と割安感だけでは「ブランド」にはなりえないということに気が付き、ブランドコンセプトを確立させ世界観を提示することで品番数を絞るという方向性に舵を切ろうとしている。これまでは「受注欲しさになんでもあります、どんなテイストでもできます」という見せ方を展示会ではやってきたと福江さんはいうが、ある程度の高額商品を販売するには「なんでもあります」という姿勢では逆に受注が取りづらいということを経験した。

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アパレルもそうだがレザーバッグ業界も厳しい。取引先がゼロになったときのことに触れ「心が折れませんでしたか?」と質問したところ、「不思議と『こうしたらどうか?』とか『このやり方を試してみたらどうか?』ということが思い浮かぶ。だからあきらめずにやってこられたのかもしれません」と福江さん。「自分が事業主としてやれるからできていのであって、もし会社員で務めていて、その勤務先が今のような状況になったら心が折れてると思いますよ」とも。そのポジティブシンキングで自社ブランド化を完成させてもらいたいと願わずにはいられない。

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Text: Mitsuhiro Minami
Picture: Koichiro Sato

Data

株式会社ふく江

〒594-1151 大阪府和泉市唐国町 3-1-20
0725-53-2281
革・レザーバッグの企画・製造・販売、OEMバッグの企画・製造・卸
URL:bag-artigiano.com

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