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そこにあることで心が豊かになれる「エイジング」の革小物

有限会社エイジング代表取締役 内藤めぐみさん

「とにかく作ってみよう」という“勢い”で始めた革小物づくり。情熱だけではみんなが喜ぶものは作り続けられない。使う側はもちろん、作り手側も喜べるものづくりをしていくことが、レザー業界に限らず、ものづくりを生業にしていく人たちの課題です。エイジング代表の内藤めぐみさんにお話をうかがいました。

April 12 2017 , Interview

エイジングとは一般的に「経時」という意味だが、レザーの世界においては、使い込むことによって、経年変化していく様を差している。その使う人、使い方によって、世界に1つの自分だけの革小物に変わっていくのを楽しむ「エイジング」がブランド名となっている。

 

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代表の内藤めぐみさんが革小物を作り始めるようになったきっかけは、美容室で髪を切ってもらっていた時の会話だ。鋏がバックから飛び出しており、それを見て「危ないね」と言うと、美容師は「シザーケースってあまり売っていなくて、良いものがないんですよね」ともらす。

この頃、布帛の雑貨を企画営業していた内藤さんは、軽い気持ちで「シザーケース作りますよ!」と請け負い、革小物を作る作家の手を借りて、シザーケースを作り始めた。

「最初の1つはとても喜ばれ、そこからは口コミで売れていきました。でも、使ううちに修理や『こうして欲しい』と要望も増えてきたので、自分が手縫いで作り始めたのです。この時は一人のためにものを作ることと、量産することの違いをあまり理解していなくて。そうしたら作れば作るほど、持ち出しが多くなってしまいました。でも、数を作るので、作るのは上手にはなりましたけどね」と当時のことを思い出し笑う。

自分で作るようになったが、当時は道具を手入れすることすら知らず、切れ味が悪くなった革包丁を研ぐことに気付き、砥石を買いに。とは言え、どの砥石を買えばいいのかも分からない。そこに一人の老人が現れた。

使っている包丁を聞かれ答えると「良い包丁持ってるじゃないか」と認められ、砥石の選びから研ぎ方まで教えてもらうことになった。「色んな事を教えてくれる親切な方だな」とはじめは思ったが、後々それがレザークラフトの入門書と言われる「革工芸 手縫いの神髄」の著者、矢澤十四一さんであることが分かった。

「革の道具を買いに行くと、どの店にもこの本が置いてありました。砥石屋さんで出会った時は誰かもわからずにいたのですが、のちに凄い方なのが分かり、この方からはノウハウよりも“ものづくりの心”を習いに行こうと通いました」

1日1個も作れなかったシザーケースも、最終的には1日に3個つくれる日もあり、「腕が上がってきたかな」と感じることがある一方、もっと多くの人に革小物を届けたいと思う様になった。

 

 

「そもそも、雑貨は持っていなくても生きていけるのかもしれません。でも、それを買うことによって心が豊かになる、今の自分に心には余裕があると感じてもらえるのではないかと思うのです。だからこそ、より多くの人に『こんなものがあったらいいな』というものを届けたいなら、私の場合は現実的な部分で、経営すること、量産体制を作ることを考えなくてはならないと動いたのです」

その後、一般向けの服飾雑貨にも取り組み、雑誌の通販や企業とのコラボレーションも行うように。ある通販雑誌では売上トップ3に入るアイテムも登場した。量産する商品を作る一方で、シザーケースや革の文房具などの“こだわりのアイテム”も作り続けてきている。

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現在はレザーポーチやバッグ、アクセサリーなども展開。バッグの中でごちゃごちゃする小物をまとめるバッグインバッグや、バッグの底部分にカードポケットが付けられている「デュ・カリテ」シリーズのバッグなど、「エイジング」の商品は機能的なところと、持ちたくなるデザインを兼ね備えている。

 

最近のヒット商品である「サック」は紙袋の様なデザインで色んな用途に使えると、男性を中心に売れているアイテム。お客様の要望で「サックホルダー」が作られ、ホルダーを使えばバッグ感覚で持つことが可能になるという。

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「企画する時は、独りよがりなものづくりにならないように心がけています。自分の作りたいものと、求められているものは同じではないので。今、何が求められ、何があれば今の生活が楽しくなるのか、その時代の中でみんなに必要にされているものを感じ取って、新しい物を作るようしています」

最近では飲食店のメニューブックやユニフォームなどのコラボ商品の展開など、活動の幅を広げている。また今年は百貨店や駅ナカでの期間限定販売イベントを通して、直接、お客様と接する活動もしてきた。ここでの経験を元に次のステップを考え始めている。

求められるものを打ち出していく一方で、「エイジング」を立ち上げてからの10年間で職人の高齢化が進み、国内の生産環境も随分変化してきているそうだ。

「私がはじめ1日1個が1日3個作れるようになっていたのと逆のことが起こってきています。年齢を重ね、いずれはその技術を誰かに引き継ぐ時期が訪れるのですが、今は後継者へ継ぐことがとても難しい時代なのかもしれません」

海外生産も視野に入れ、2011年にはベトナム視察へ。工場視察の他に美大生のものづくりチームにも会い、話しを聞いてきた。その中で誕生したのが手刺繍のイニシャルハンカチだ。丁寧な手作業を生かして企画した上品なハンカチは今でも好評でギフトに喜ばれているそうだ。

スタートは「とにかく作ってみよう」という“勢い”で始めた革小物づくり。情熱だけではみんなが喜ぶものは作り続けられない。使う側はもちろん、作り手側も喜べるものづくりをしていくことが、レザー業界に限らず、ものづくりを生業にしていく人たちの課題なのだろう。

Text: Kaori Tomabechi
Picture: Kaori Tomabechi

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有限会社エイジング

〒145-0063 
東京都大田区南千束3-14-16
TEL:03-6425-6600
FAX:03-6425-6601

URL:aging.co.jp

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