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この場所を生かして、やってきたことを繋げていく。その途中です。

株式会社シーナタウン 日神山晃一さん

池袋から西武池袋線で一駅の椎名町にある「シーナと一平」。駅前には商店街がびっしり張り付いていて、その中にある5部屋の小さなゲストハウスです。ここにはミシンが店頭に置かれていて使いたい人と教えてあげたい人がオープンな空間で繋がっています。小さなモノ作りがコミュニティーのコミュニケーションになる面白い取り組みがあります。オーナーの日神山さんがおっしゃる「ファブリックで世界と繋がり、ミシンで地域(街)と繋がる」というのも案外簡単なことなのかもしれません。

October 18 2016 , Interview

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池袋から西武池袋線で一駅の椎名町にある「シーナと一平」。駅前には商店街がびっしり張り付いていてその中にある5部屋の小さなゲストハウスです。1Fにはコミュニティーに開かれたカフェがあって、なぜかミシンが置かれているという「?」な感じのスペースです。ココを経営する株式会社シーナタウンの日神山さんは、会社の後輩で同郷(笑)。会社を辞めた後、他社でキャリアを積んだのち設計者として独立されココにいたるという流れで、個人的に(かなり)興味を持ってお話を聞いてきました。気心が知れているところもあって突っ込んで聞いたお話もあるのですが身もフタもない話なんでココではさすがに・・・(笑)。

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スタートアップを許容できるすごくユルイ街

-   どうして椎名町なんでしょう? 決して好立地というわけではなさそうですが?

日神山 まず、住んでたっていうのがイチバンで(笑)。住んでいると面白い人たちとつながりができて、何かやろう・やりたいって人がいっぱいいるんですよ。そういう人たちと知り合えてそんな感じになりました。僕もいままでずっと設計の業務をやってきているわけですが、基本的に同じことの繰り返しになっていて、そんな中で触発されて何かチャレンジしてみようかなと思ったんです。

-   割と地味な商店街ですよね?オモシロイことが何かあったんですか?

日神山 ターミナルに近いってこともあっていろいろな人が住んでいます。比較的安いっていうのもあるんでしょうけど変な人がいっぱいいますよ(笑)。ジャズマンとかアーティストの人もいたりするんで、特に何かが起こるってわけではないんですが日常の中にいろいろな要素が入ってますね。そんな人がフツーに住んでます。溶け込んでますよ(笑)。そういったものにユルい感覚なんじゃないでしょうか?警戒しないというか・・・(笑)

-   それで触発されて、いきなり物件を借りてっていう流れで?

日神山 いいえ。そういうチャレンジをしようとした中で、まずはリノベーションスクールに通ってみました。そこでは実際の案件を題材に集まった人でアイデアを出し合って検討するんですね。そのあと実際に運営してみるというもので。で、住んでいるということもあって僕のアイデアで計画が進みまして、こんな風になったと(笑)。

-   成り行きですね(笑)

日神山 流れ的にはそうなってしまいました(笑)。ただ、自分で場所を作ると今まであった人とのつながりで、いろいろなことがしたいなと考えるようになって。そんな思いやアイデアが出てきました。

-   今まではインテリアのデザイナーとしてオフィスの中にいたり、常になにか「新しいもの」とか「違うこと」を考えてきたと思うんですが、お店を持つと目線がグランドレベルの「いつもの場所」に固定されるわけじゃないですか?何か見えるものはかわりましたか?

日神山 そうですね。今まで仕事について「見る/見られる」っていうのはなかったんですが、ここでは基本的に見られているんですね。そういった感覚はオフィスで仕事しているとないモノですよね。ここでは何かしていると話しかけられます(笑)。とっかかりは「何してるの?とか、なに作ってるの?」で、それから挨拶して親しくなってって感じですかね。そういうことの積み重ねから、ココを自分の場所だと感じてもらうとすごく付き合いが深くなります。

-   今日も宿泊のお客様といった感じの方じゃないですね?

日神山 近所の主婦の方とか、子供さんを連れてきていい「コミューナル」なスペースと感じていただけているかたは多いです。

-   でも、いきなり常連になるってもんでもないでしょう?

日神山 それが、ミシンなんです。

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モノづくりは、世代の垣根を簡単に越えます

-   ミシンがどういうつながりを生むんですか?

日神山 子育ての世代は案外ミシンが必要だったりするんですよね。学校で使う巾着袋的なものだったり雑巾だったり、制服のすそ上げとか。幼稚園でも同じでお遊戯会の衣装なんかも必要だったりしますよね。僕がこの場所でミシンを使ってると「!」ってなるみたいです。それで、使い方を教えてあげたりしてここで作業してもらうんですね。すると今度は逆に、年配の方が寄ってきて、「何を作ってるの?」「教えてあげようか?」って声をかけられるようです。今の30代くらいだとミシンは使えなかったりしますし、年配の方は久しぶりにやってみたいってところがマッチングするんですよ。

-   なるほどー!オープンな店だとそういうことも起きますね!そういうのもあるんですねー。でも、そもそもの話ですが日神山さんが自身でミシンを持っていて、それを思いついたってのは不思議ですね。男性で40代でミシンって(笑)。

日神山 僕にとってはそうでもないんです。実家が内装業をやっていて母親がカーテンとかの縫製をしていたんですね。それで家にミシンがあって、自然と僕も使えるようになりました。日常なんですよね。

-   へー、そうなんですね!それでミシンが前面に来てるんですね。

日神山 こういった場所で何かするときに「自分でできるコト」を出そうと思ったんですね。コーヒーをおいしく入れられる人、美味しいご飯を作れる人というのと同じようにミシンを使えて教えられるというのをここでやろうと。

-   なるほど。「何かを作っていく」きっかけで、自分でできることを用意したと。

日神山 そうなんですよ。あと、「シーナと一平」全体のコンセプトを考えたときのモノの中に「ファブリックで世界と繋がり、ミシンで地域(街)と繋がる」というものがあります。旅行者とこの街の生活者とを繋げるコンセプトなんですが、何か共通の「モノづくり」が中心になっています。

-   「モノづくり」という意味では、こういう商店街にこういった場所を作るのも創造的なことですよね。

日神山 それが一番チャレンジングなことですよね。コミュニティーから受け入れてもらえるのかとか心配でしたが、工事中から興味を持ってもらえて。

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場所を作るとヒトが集まって情報が集まります。

日神山 ココを工事する際にも、商店街を歩く人が興味津々でずっと訊いてくるんですよ。「何ができるのか?」とか「いつできるのか?」とか。

-   工事期間は割とありますよね。そういうの。

日神山 地元の人なんでそれからずっと毎日声かけてもらって。そこからはクチコミですよね。オープンしてからも、Tシャツを売りたいとか、パンを売りたいとか。そういう人たちにちょっと場所を提供してSNSで情報流してってことをしています。

-   普通のCAFEではできなかったりしますね。ちょうどよさそうなボリュームだったり、ちょうどいいユルさかもしれないですね。

日神山 豊島区は消滅可能性都市とか言われちゃってて、それは子育て世代が住みつかないということがスタートだと思うんですが、ココはそういう人たちが集まれるようになっています。土間があってベビーカーとかバギーとか置くスペースはありますし。靴を脱いで上がるようになっていて衛生面でも問題ないと思います。乳児だと椅子はつらいと思いますがココは畳になってますし。

-   それで、そういう世代の人が集まってくるわけですね。

日神山 そうなんです。それでおのずとそのあたりの情報も集まってくると。

-   それが仕掛けにつながってくるわけですね。

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エリアがおもしろいと思ってもらえる仕掛けを

日神山 この街と繋がって連携していないと、実際ここだけでは成立しないんですよね。1Fでは食事を出していないんで、宿泊のお客さんには食事のできる店とか、銭湯とか紹介してこの街につながっていくように案内しています。

-   外国の方にとっては面白いことかもしれないですね。僕らにとってはただの商店街(笑)なんですけど。

日神山 この街には「トリップアドバイザー」の“日本を訪れた外国人旅行者に聞いた「人気の宿泊施設ランキング」”でベスト5に入る「ファミリーイン西向(サイコウ)」っていう宿泊施設があって「日本最強のおもてなし」といわれている凄いホスピタリティーの宿があるんですね。ココをやるにあたってご挨拶に伺ったんですが、その時に「競合ではなくって一緒に面白い街にしましょう!」っておっしゃっていただいて、それからこの街でのやりやすいやり方とかいろいろ教えていただいてスゴク感激しました。

-   それはなかなかできる対応じゃないですね。

日神山 そうなんです。それから「これからこの場所に何が必要なのか?」とか考えるようになりました。

-   それはどんなことになるんですか?

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この場所を生かして、僕が今までやってきたことを繋げていく

日神山 僕は0 “ゼロ”の状態から1 “イチ”を生み出せる人間ではなく、1を100にしていく人間なんだろうと思います。だから、ここに至るまでやってきたことをここでつなげていくような仕事にしていきたいと思っています。

-   それは具体的にはどんなことですか?

日神山 たとえば「カーテン」です。「ファブリックで世界と繋がり、ミシンで地域(街)と繋がる」ってさっき言いましたが、カーテンってみんな8割がた妥協していると思うんですよ。引っ越してきてとりあえず既成のモノを買ってから付け替えたりあまりしないでしょう?オーダーするのが面倒だったりっていうのが、ここですぐできるようになれば、自分で簡単にできるようになれば楽しくなると思うんですよ。家には絶対窓があるんで、この通りを歩いていたら窓越しに見えるカーテンがやたらカワイイのって面白いと思います。

-   なるほど。ファブリックで街を面白くするって感じですね。

日神山 そうなんです。商店街でしている街灯の飾りつけなんかもやれたら楽しいでしょうし。思いついたことがすぐできるのっていいことだと思います。そういうのが見えることでお客さんが「縫いたい!」ってなるようなトライ&エラーがココで起こる拠点にしたいです。

-   なるほど、そういう感じで街に関わっていくんですね。

日神山 モノづくりで繋がりながら、街を面白くしていきたいと思っています。そういうポテンシャルを引き出したいです。僕もそうして街にポテンシャルを引き出してもらったので(笑)。

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まったく、本当に何の変哲もない街の風景です。見慣れた景色の中に「思い」が隠れているもんですね。

街歩きの中でちょっと変わった雰囲気を出している店の中にどんな「想い」が詰まっているのか、そういったものに触れてもう一度景色を見直すと違った風に見えるのかもしれません。「泊まる」ことだけでゲストハウスを成立させるのはなかなか厳しいかもしれませんが、街と積極的にかかわって繋げていくことで豊かな日常性を持ったゲストハウスになれるのかもしれません。そういった繋がりの広がりが「ホスピタリティ」のある「住みたい」街のベースとなっていくんでしょうね。

Text: Koichiro Sato
Picture: Koichiro Sato

Data

Data

シーナと一平

〒171-0051 東京都豊島区長崎2-12-4
TEL 03-5926-4410

URL:sheenaandippei.com

Data

株式会社シーナタウン

〒171-0051 東京都豊島区長崎2-12-4
TEL 03-5926-4410

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