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廃棄物の新しいビジネスモデル

株式会社ナカダイ コンサルティング事業部リマーケティング課 三上勇介さん 河西桃子さん

廃棄物処理業者である株式会社ナカダイでは、“「捨てる」と「使う」をつなぐ”という新たな発想をもとに2012年に「モノ:ファクトリー」をオープン。私たちの生活に必要不可欠でありながらも、決して身近な存在とは言いがたかった廃棄物処理業界に新風を吹き込むべく事業を続けている。前橋工場で我々を出迎えてくれたのは、同社コンサルティング事業部リマーケティング課の三上勇介さんと河西桃子さん。モノ:ファクトリーでの取り組みについて、両氏にお話を伺った。

November 5 2015 , Interview

Monofactoryインタビュー

“マテリアルを売る、という新発想”

――2013年にモノ:ファクトリーがグッドデザイン賞を受賞されました。受賞対象は「リマーケティングビジネス」となっていますね。

三上 つまりは「モノ:ファクトリーにおける廃棄物の新しいビジネスモデル」そのものが選ばれたということです。

――そのビジネスモデルについて、もう少し詳しく教えていただけますか?

三上 廃棄物処理業では、もともと「リユース」と「リサイクル」というふたつの処理形態がありました。そしてその中間を担う存在として当社が2012年にオープンしたのがモノ:ファクトリーです。東京・品川のショールームと群馬・前橋の工場の2拠点で展開していて、それぞれでリサイクル前の素材そのものを展示・販売しています。

――こちらの棚に陳列されたものがそうですね。このように素材のレベルにまで分解されたものをこれだけの量で見せられるとちょっと衝撃ですよね。現在は何種類くらいの素材を取り扱っているのですか?

河西 全部合わせて約600~800種類になります。

――そのうち時期によって入れ替わるものはどのくらい?

河西 基本的にすべて入れ替わる可能性があります。たとえばこちらのペレットも、この色がなくなれば新しい素材と入れ替えになります。その都度、出てきた素材を売るという流れですね。逆に売れ行きが悪ければ溶かしてしまう、ということもありますし(笑)。

――商品を溶かしちゃう(笑)。

河西 溶かしたり破砕したり、要は素材としてリサイクルに回そうということです。ここにあるものは、そもそもがリサイクルの中間で精製されるものですからそんなことも可能なんですね。

Monofactory倉庫

 

“必然性のあった業界オンリーワン”

――自ら店舗を構えてマテリアルそのものを売る仕組みというのは、廃棄物処理業界ではこれまでにもあったことなんですか?

三上 マテリアルとして販売するのは業界初ですね。

――いま国内でナカダイさんと同じようなことをやろうとしている企業もない?

三上 ないと思います。というのも、そもそも私どもの廃棄物の取扱いが特殊なんです。

――特殊とはどういうことでしょう?

三上 まず第一に廃棄物業は許可業なんですね。許可方法が品物と処理方法で決まっている。

河西 たとえば破砕のプラスチックの許可とか、圧縮の金属の許可とかですね。

三上 そのため廃棄物処理業界というのは、一般的に金属系とかプラスチック系といったように得意分野ごとに棲み分けがなされているんです。それぞれの企業では専門性のあるプラントを構えて処理しているので、金属屋はプラスチックに興味がないし、プラスチック屋は金属に興味がない。だからこのようにいろんな種類が大量に入ってくること自体がまずないんです。

――ナカダイさんは廃棄物処理業者の百貨店みたいなものなんですね。そのような形態がそもそも日本国内で珍しいと。

三上 そうです。それに加え、廃棄物を扱う際に「どれだけ素材の価値を上げるか」という意識の前提あって、それが会社の土台となっていることも挙げられます。

――創業は昭和12年でしたよね。当初はどんなことをやられていたんですか?

三上 まずは鉄ですね。現在の品川のショールームのところに会社がありました。

――その当時を考えれば、言い方は悪いですけど屑鉄屋のような存在だったんですか?

三上 いえ、それが市中に出回った鉄ではなく、工場から出た打ち抜き材だとかの質のいい鉄を集めていたようなんですね。つまり有価物の中でも質のいいものをずっと取り扱っていたんです。

――きちんと選別することで価値が出るということを創業時から理解してやっていたと。それがどんどん品目が広がっていき、現在の形につながっているわけですね。

 

Monofactory素材

 

“使い手の想像力を喚起する素材力”

――実際にモノ:ファクトリーの店舗にいらして、購入されるのはどんな方ですか?

河西 子ども向けのワークショップや工場見学をやっていることもあって、前橋で一番多いのは親子連れです。ただ品川のショールームを含めると建築・デザイン関係者が多いかも知れません。

――そもそものターゲットはどちらだったのでしょう?

三上 当初は建築・デザイン関係者がメインターゲットでしたね。

――彼らにとっては確かにおもしろい素材だと思います。たとえばモノ:ファクトリーがマテリアルを提供している吉祥寺の焼き鳥屋「てっちゃん」の内装は、“作品”と呼べるようなパワーを秘めていますよね。壁やテーブル、座席にいたるまで、不思議なモジャモジャで埋め尽くされている。あのマテリアルはもともと何だったのですか?

河西 あれはパソコンのLANケーブルのビニールでできた被腹膜です。中の銅線と分別したあとにあれが残るんです。色も派手ですし、すごいインパクトですよね。

――さらに発展させた形として、マテリアルを加工して一般消費者向けに商品化するという考えもあるんですか?

三上 製品化とか商品化とかは、まだ具現化するところまで落とし込んではいないんです。そもそも廃棄物の特性として大量に安定的に同じものが入らないですから、継続的に対消費者向けの製品を作るということは想像できないというのがその主な理由です。

――なるほど。その都度こちらへ来て、ひらめいたレベルで揃えて持って帰る分には「いい買い物ができた」ということになるけれども、「ずっとこれを安定的に出して」と言われると困ると。

河西 オンラインストアでも100グラム単位の量り売りをやっていますが、種類も多いのでなかなか追いつかないのが現状ですよね。

三上 それにこのマテリアルは、ただモノを作る用途だけではなくて、いろいろと学べるツールでもあるんですよ。時代背景であるとか、そもそも何だったのかとか、どのようにリサイクルされているのかとか。だから「こう使ってください」という固定的なやり方よりも、使いかたの創造の余地があるようなものとして提案したいんです。

――確かに、各アイテムに記載されたマテリアルプロフィールを読むだけでも「もとはアレだったのか!」と考える楽しみがありますよね。

 

Monofactory信号機

 

“遊びながら学べる生きた教材に”

河西 アウトプットの方法は異なりますけど、先程お話した子ども向けのワークショップや工場見学なども同じで。それらもモノの新しい価値を提案するための事業の一環なんです。

――ワークショップはモノ:ファクトリー以外の場所でも開いているのですか?

河西 現在のところ商業施設やイベント会場での出張ワークショップが多いですね。あと練馬区の「まちの保育園」では私どもが提供したマテリアルを使って子どもたちが自由に遊ぶという取り組みをしています。子どもたちはマテリアルを「ナカダイ」と呼んでいるらしいんですね。だから以前に見学させてもらった時には「ナカダイを持ってきているお兄さんたちだよ」って紹介されたり(笑)。

――(笑)。それは契約されてやっているんですか? 費用負担もしてもらってとか。

河西 そうですね。

――子どもたちはどんな遊び方をしているんでしょう?

河西 本当にどの子も自由なんですよね。ひとつの例だと、U字型の鉄があってそれをただ繰り返し刺してトンネルを作るとか(笑)。小さい子だと、以前はつかめなかった細い棒が遊んでいるうちにつかめるようになったりして。

保育園の方々が、 ドキュメンテーションという記録にまとめていて、それを共有してもらうこともあ ります。  「廃棄物だから」、「エコだから」ということとは全く別の次元で子どもたちに親し んでもらっています。

 

Monofactoryトレイ

 

“ゴミに宿る土地の記憶”

――実際のところ、こういった取り組みのコストについてはどうなっていらっしゃいますか?

三上 イベントでの人件費ですとか、当然コストはかかっています。

河西 100グラム200円とかですからね。

三上 何トンも買ってくれれば、それはねえ(笑)。

――ただイベントで売れなくてももう一度溶かしてということもできますしね。もともと廃棄物であることも考えると、結局のところ宣伝効果の方が大きいという判断でしょうか?

三上 そうですね。この活動に共感してくれて、通常の廃棄物の取引やマテリアルを提供してくれる企業が増えたりと、数字に表れないところでよい影響が出ています。だから会社的には単純なコスト増とは考えてはいないんですね。

――「そんな事業をしているのなら、私たちの廃棄物も引き取ってくれますか?」というようなことが実際にあるんですね。

三上 企業からすると自社のCSR(企業の社会的責任)のアピールにもなりますし。

――「廃棄物もきちんとリサイクルしてもらっていますよ」と言えるわけですね。現在、社会貢献というのは企業にとって必要不可欠なものになりつつありますからね。

三上 企業が環境ISOを取得して、実際のリサイクル率をカウントするようになって10~15年経ちますけど、ゼロエミッションを達成しましたとなって、次なる環境に対する姿勢のアピールの方法がどの企業も頭打ち状態なんです。単純なリサイクルというのは既にやり切ってしまっていますから。そういった状況下で私たちのこういった事業が注目されるとよいですよね。

――日本国内では唯一なわけですから、そこは強いですよね。でも廃棄物を集められる範囲というのはおそらく決まっていますよね。

三上 私どもが現実的に実働で動ける範囲は関東圏と長野です。ですから全国の同業の方に共感してもらって、さまざまな土地にモノ:ファクトリーができたらいいなと思っているんですね。道の駅のように、「あそこの地方にはこういったマテリアルがある」となったらおもしろい。

――それが全国規模になって「長野県産リベット」とか「大阪府産メッキ」とかとして売り出せたら画期的ですよね。

三上 そう思います。実は廃棄物って地産地消物なんですよね。だから地域のコミュニティと協力し合ったり、自分たちの生活を見直すきっかけになったり。みなさんがゴミだと思って捨てたものって、想像した以上にいろんな可能性を秘めているんですよ。

Interview: Koichiro Sato
Text: Takeshi Nagashima
Picture: Koichiro Sato / Takeshi Nagashima

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株式会社ナカダイ

群馬県前橋市を拠点に廃棄物処理を行う総合リサイクル業者。扱う廃棄物は鉄・非鉄、プラスチック、古紙までと幅広く、北関東最大のリユース市場も運営する。2012年、品川ショールームと前橋工場にモノ:ファクトリーをオープン。リサイクル処理過程で精製されたマテリアルを展示・販売するなど、モノの「使い方の創造」と「捨て方のデザイン」を提案している。
URL:www.nakadai.co.jp

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