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製材産業の価値観では測れない 「木」 が本来が持つ「美しさ」という価値を「抜き出す」作業です

Artist / ブレント・コマー(Brent Comber)さん

カナダのブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーに拠点を置いてアーティストとして活動されるブレント・コマー(Brent Comber)氏。3年ぶりの来日に合わせ新しい作品「フレスコ」シリーズを見せていただきました。自然のみが作り上げられる偶然の形態とミニマルアートのような現代性。それらををあわせもった『価値』を発見したところに自由な感性と自然との共感を感じました。

November 7 2016 , Interview

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カナダのブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーに拠点を置いてアーティストとして活動されるブレント・コマー(Brent Comber)氏。代表的な作品としてはアルダーコレクションがあります。これはアルダーの細い幹や枝など定期的に伐採され廃棄されるものをアートに昇華した作品です。

自然のなかの素朴なマテリアルをそのまま使いながら、モダンでシャープな都会的な感覚のオブジェに生まれ変わっています。木の持つ個性を生かしながら、全く新しい感覚のナチュラルさが表現されていて、その手法もですが愛情に深く感激するような作品であると思います。

 

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アートやオブジェとしての美しさや存在感は当然としても、腰かける『スツール』としての機能を十分満たしていて「使える」アートになっています。日本人の住宅事情としては、アートが住宅の中で場所をとるのはなかなか難しい問題がありますが、こうした「家具」として存在してくれると嬉しいですね。日常生活が実用だけで構成されているのは実に味気ないと思っていますが、このような形で生活に『ART』があるというのは理想的だと思っています。

そのほかには切り株や丸太など建築材料として、または家具の材料としては不適合なマテリアルを選びアート作品に仕上げられています。このインタビューの3日前に出来上がったという新しいホームページも大変面白くできていてイイ感じ。コマーさんはちょっと手直しがいるっておっしゃってましたが細かい部分なんでしょう。世界観や愛情がにじみ出ていて是非目て欲しいホームページです。

 

ブレント・コマー(Brent Comber)氏はカナダの太平洋側、ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー郊外を拠点にしてさまざまな樹木を使ったアートを生み出しています。それは、産業の規格化、効率化の中ではじかれたモノであったり、人間の森との共存の中で排除されたりしたモノであったものを、新たな視点でその価値を見出しています。純粋にアートである『造形オブジェ』以外にも、もともとされていた環境デザイン、家具デザインにも新たな美意識や感性は発揮されています。

ブリティッシュ・コロンビア州は独特な気候は、樹木の生育に非常に適した環境であり、森林が大変豊かな場所です。そのような環境下でバンクーバーは木材資源を活用することで繁栄してきました。そこで生まれ育ったコマーさんは『木材』や『製材所』そして『森』がすごく身近であったとおっしゃいます。コマーさんは最初はガーデンを作ったり家具をつくることを仕事にしてこられました。21年前より木材を使ったアート作品を制作するようになられたのですが、その作品は木材/森林に対する深い愛情でありリスペクトでもあります。エコロジーであることサステイナブルであることが社会的には当たり前のようになりました。思想的に概念的にそうであろうとすることがムーヴメントのようでもありますが、コマーさんのやられていることはそうした考え方以上のモノ、つまり100年以上前から人々が暮らしの中で当たり前のように行ってきたことの再発見であり、新しい技術を使っての価値の再構築のように思います。産業化以前には人々の中にあった資源との向きあい方を作品の中にメッセージとして忍び込ませています。また、自然のモノが持つ美しさについて独自の切り取り方で提示されているように思います。

 

今回は非常に短い滞在時間の中で少しお時間をいただいてお話しする機会をいただきました。大変興味深いお話を聞くことができたと思います。コマーさんは大変優しい人柄がにじみ出ている方でゆっくりと丁寧にお話をされます。また、身長も190cmを超すガッチリとした大きな体格をされているのですが、それはブリティッシュ・コロンビアの森の大きな樹を想像させるような雰囲気でした。

今回の来日で新しいシリーズをお持ちくださったので、それらを中心にお話を聞きました。はっきりした声でゆっくりお話をされる方ですのでそんな感じでお読みください(笑)。

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『木』本来の美しさを見て欲しい。

 

-   今回の来日では新作を持ってきていただいていると伺いました。コチラの作品はどういったものになるのですか?

コマー このシリーズは『フレスコ』(※fresco 塗りたての漆喰でできた壁面に水彩で描く壁画法の意味)といいます。石膏で作ったように見えるのですが木材をペイントしたものです。

-   本当に石膏で作ったもののように思えますね。塗料とは驚きです。

コマー スペシャル・ペイントです(笑)。石膏のように見えるようにするため随分と試行錯誤しました。

-   こういったものなら石膏で量産が可能ですね(笑)

コマー そうかもしれません(笑)。しかし石膏の型を作るのにも本物が必要です。しかし、今回の作品はそれでは表現できないテクスチャーやフォルムの集合です。そういった意味で本物に勝るものができません(笑)。この作品を見てもらう皆さんの意識を変えてもらうために白く塗っているのです。

-   なるほど白にすることで木肌が持っている表情や樹皮にある瘤のカタチだけが強調されますもんね。自然の造形美のそこだけにフォーカスするということですね。

 

 

-この作品で使われているのは木のどんな部分なんですか?

コマー いろいろです。根っこに近い部分もありますし枝が出たまたの部分もあります。さかさまに配置したりしているので、もともとあった場所が想像できないかもしれませんね。大きな木だと全体を見てスゴイと思いますが、今回は私はピクセルを見て抜き取る作業をしました。

-   ピクセルですか。

コマー そうです。テクスチャーとフォルムを最小単位で考えるようにしました・

-   なるほど。まっしろな色をした木を見ると、それは決して自然なものではないんですが、形が記憶を呼び覚ますようですね。子供のころからの記憶でぼんやりとしたものや、意識の中で洗練された自然のように感じます。逆にどこか未来的な感じもしますし。

コマー 私の作品作りではフォーカスが2つあって、一つは「作品を見る人が、木本来の美しさを見て欲しい」ということ、その次が「ファンクション」です。どれだけ機能的に考えるかは重要なテーマのひとつでもありました。しかし、今回はそのひとつ目に特化した作品です。どれだけ美しいか気づいてもらうのが一番なのです。

 

 

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製材産業の価値観ではどうにもできないもの

 

-   これらの木材も捨てられるはずだったものですか?

コマー 捨てられるというよりは業界の人が目を向けない部分です。ブリティッシュコロンビアでは木材産業が盛んです。業界の人が欲しいところを取った後に、どうしていいのかわからなくなった材料を買い取っています。本来であれば無視される材料ですね。

-   製材産業の業界の中では、価値を見出すことができなかったということですね。材料としては使いにくいだけのものだと思います。そのものの『美しさ』を探求する中で価値が発見されたというのが素晴らしいです。ある一つの産業的な価値観がすべてではないということですね。

また、表現においてもフォルムとテクスチャー以外の要素を『フレスコ』として真白く消したところに、エコ的なを謳うナチュラル志向とは一線を画すものを感じます。

 

 

-   この作品はすでにカナダでは発表されているんですか?

コマー いいえ、日本が初めてなんです。ですから反応や評価が気になりますね(笑)。

-   この後、ヨーロッパとかでもされるんですか?

コマー 日本だけです。そのあとはカナダへ戻りますよ(笑)。じっと反応を見ますよ(笑)。

 

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-   コマーさんの作品は日本人の琴線に触れる所が多いように思います。日本人が持っている自然に対する美的感覚に近いのかもしれませんね。

コマー ありがとうございます。21年ほど前にこのような作品作りを始めたのですが、日本を旅したときに京都の庭園に魅せられてしまって。

-   そうなんですか?

このような仕事をするようになりました。それまではバンクーバー(ブリティッシュコロンビア州)の近郊でガーデンを作ったり家具をつくったりしていました。

-   日本の文化にインスパイアされた部分があるというのは嬉しいですね。

コマー ありがとうございます。

-   いま日本でコマーさんの作品を見られるところはありますか?

コマー 納入したのはバウムクーヘンカフェ(二子玉川)でしょうか。あと、チャムス(表参道)のシンボルツリーですね。あと伊勢丹さんとか。BCウッドさんのショールームでも取り扱っていただいています。

-   これからもっとたくさんのコマーさんの作品に多くお目にかかれるようになるといいですね(笑)。

 

終始穏やかで、ゆっくりと丁寧にお話しされるのが印象的でした。展示会場でのインタビューでしたのでお話をしている間にもたくさんの来場者の方が興味深げに作品を見ていかれるのを見るにつけ、日本人好みの作品だと確信しました。和室でも床柱などではその表情の面白いものなどが好まれますし盆栽や生け花においても個性的な表情を生かす感性を日本人は持っています。自然のみが作り上げられる偶然の形態とミニマルアートのような現代性。それらををあわせもった『価値』を発見したところに自由な感性と自然との共感を感じました。

 

interview

 

 

 

 

Text: Koichiro Sato
Picture: Koichiro Sato

Data

Data

Brent Comber Originals Inc.

1657 Columbia Street, North Vancouver,
British Columbia, Canada
URL:www.brentcomber.com

Data

BCウッド日本事務所/ショールーム

〒150-0021東京都渋谷区恵比寿西2-7-9オノダビル1F
03-6455-1571
URL:www.bcwood.jp

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