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URBAN RESEARCHが取り組む地域活性化活動

URBAN RESEARCH|斉藤 悟さん

セレクトショップ、URBAN RESEARCH(アーバンリサーチ)が取り組む地域活性化活動である「JAPAN MADE(ジャパンメイド)」プロジェクト。2014年9月からスタートした本プロジェクトは、長崎を皮切りに、金沢そして東北と着実にその活動の範囲を広げている。クリエイティブを長く続けるために、地域とどのように関わりあっているのか。そして今後のビジネスとしての展望について、本プロジェクトのキーパーソンである同社の斉藤 悟さんへインタビューを試みた。

October 15 2015 , Interview

independ interview

NYのコミュニティから発想したジャパンメイドプロジェクト

――ジャパンメイドプロジェクトですが、これは長崎への出店を決める前と後、どちらのタイミングで出てきたアイデアだったんですか?

斉藤 後者ですね。長崎は初めての土地でしたし、出店ラッシュだった時期でもあったので、金太郎飴のように画一的にならないためには何か「新しい取り組み」が必要だなと考えていました。それまでも東北の震災をきっかけに地域活性化の事業は社内でもポツポツあったんですよね。そういう動きがあったので、その土地でずっと活動なさっているローカルコミュニティと何か一緒に取り組ませていただけないかなと考えたのがきっかけです。

――そのアイデアを形にするにあたって、影響を受けた先例などはあったんですか?

斉藤 長崎出店の前年の話になりますが、FREEMANS SPORTING CLUB(フリーマンズスポーティングクラブ)の日本での店舗運営を私たちが担当することになったんですね。彼らの店はNYのLower East Sideにあって、レストランとバーバーと洋服屋がひとつになった印象的なメンズセレクトショップなんですが、現在は様々な背景がございますが、立ち上げ当時に「この商品はこの人に縫製をやってもらって」というように、同じブロック内で生産に関することを賄ったりと、コミュニティの単位で活動している点がとてもユニークで。彼らのように地域のスモールビジネスをその地域で消化していくことで、ビジネスを極端にデベロップさせずに、たとえ売上的には横ばいであったとしても毎年必ず発注があるような、そういう回りかたを考えたほうがいいのかなと思ったんです。双方に無理のないペースで長く続き、近い距離でやるというスキームを長崎店に紐付かせようことがアイデアのもとにありました。

independ interview

消費されない商品にするために

――ジャパンメイドの基本姿勢には共感できるんですが、一方でそれをお土産にはしないというお話を聞きまして、今日は改めてその真意を伺いたいんです。たとえば長崎店ではカステラを扱っていますが、そこには旅行客による「東京のアーバンリサーチと品揃えが違うね」というような土産需要があると思うんです。でも地域の人たちにとってそれは割と見慣れたものであって、いくらか形が変えてあるにしても、地消するような感じではないのかなと率直に感じたんですね。

斉藤 「お土産ではない」という考えかたは、売る側の目線と言ったほうが正しいです。買う側にとっては、たとえば東京に来て、せっかくだからここでしか扱っていないインポートのブランドを買おうというのも、それも分かりやすく言えばお土産という感覚ですよね。だから結果的にお土産として買っていただくのは全然いいんです。でも、そういった商品に「お土産として大人気」というような触れ込みをつけないほうが絶対にいいと私は考えていて。それはクリエイティブの面でという話ですね。私自身はPRが専門ですから情報操作の観点としては、アーバンリサーチが地域のお土産品をプロデュースしている、ということよりも単純にすでにそこにはいいクリエイティブがあり、プロダクトがあるので、それをアーバンリサーチが紹介したい、という見えかたで発信したいんです。

――お土産的なアプローチにすると、流行ができてしまって売れ筋にムラがでたり、飽きられてしまうというはあるでしょうね。

斉藤 そうですね。だから「長崎のアーバンリサーチといえば、あの別注したカステラだよね」というイメージも強過ぎたらダメかなと思うんですよね。東京のアーバンリサーチとの違いを知らずに入店して「何か違うコーナーがあるな」くらいの感じで見てもらえればそれでいい。私たちのビジネスでは難しいと言えば難しいんですけれども、モノとして面白いであるとか、いつもあるものにユーモアを足しただけとか、サラッとやりきったほうが体力的には長く続くだろうなという気がします。

FREITAGから受け継いだ哲学

――「宣伝をしない宣伝」というやりかたは以前から取り組まれていたんですか?

斉藤 FREITAG(フライターグ)というスイスのバッグブランドを私たちが扱い始めたときに、創設者のフライターグ兄弟から「過度なセルアウトはしなくていいです。伝えることを重視してください。」と言われたんですよね。「雑誌を集めてこんなの出来ましたよ、みたいなことは絶対にやめてくれ。それをやってしまうとみんないつか飽きて要らなくなるから。これが本当にいいと思ったら、それを友達に伝えてくれたほうがうれしい」と。シンプルなんだけどシンプルじゃないというカッコよさがスイスという国の哲学で、それを理解した上でやってくれるんだったら一緒にやりたいと言われて、結局そこから十数年続いています。

――でもあっという間に人気を確立されましたよね。

斉藤 あのアイテムはひとつひとつ柄が違うので、「この柄ありますか?」と電話で問い合わせも受けても、「実際に店舗に見に来てもらわないと分かりません」となってしまうんですね。それっておそらく、オンラインショップでそれぞれの商品ごとに写真を載せていけば済む話で、それをやれば手っ取り早く売上が得られるのにという営業的な発想も当然あるんです。でもそれをやってしまうと一時のピークあって、そこからはそのまま下がるしかないんですよね。

――ローカルコミュニティビジネスでも、それと同じことが言えるんじゃないかということですね。

斉藤 そうならないためには、ひと言でいうとサラッとやる、ということになるんですよね。(ジャパンメイドプロジェクトは)まだ3、4つという段階ですけれど、基本的には新しいところに出店すれば増やしていくという方針なので、いま加熱してしまうとその次の機会を失いかねない。ですから長いスパンで続けていくためには、PR担当だからこそ考えられる「過度に宣伝しない方法」を見出すべきなのかなと思うんです。

企業としてのコミュニティとの関わりかた

――そう考えると、アーバンリサーチくらい人数のいる組織が、こういうコミュニティに突っ込んだということ自体が興味深いんですね。それだけ困難になるというのが想像できるのに、すごいことに挑戦しているなと。

斉藤 でも私たちも無理のない程度でやっているので、不思議とその大変さっていうものをそんなに意識していないですね。たとえば10品目、10人の方々と一緒にやりたいと思ったときに、オープンまでに3品目しか間に合わなければそれでスタートすればいいという考えでやっていて。それを7品目くらいまで無理やり埋めていたのがいままでのビジネスの形なんですよね。お願いしている人それぞれのペースをこちらでコントロールし出したら、より土産化してしまうと思うんです。そうじゃないよねっていうことをやる前から決めてあるので、上手くできてないことに対して、「できてないじゃないか!」という話にはならないです。

長崎

 

――こういうコミュニティビジネスの在りかたに触発されて、大手のビジネスの価値観もすごく変わると思うんですよね。たとえばTシャツにしても、「いや、ウチの作りかたではこんなには納品できません」というような商売を良しとしてやられている方々が実際に増えているわけですよね。するといかに独占契約を結んだとしても、これだけしか入らないの? みたいなことになると思うんです。

斉藤 そうですね。確かに店舗の利益の構造としては若干薄くなったんですけれども、でもそこにインターネットという人件費のかからない部分で(利益が)厚くなっているんで、トータルではあんまり変わっていないんですよね。ただ地域コミュニティと関わりながらやっていこうとすると、顔を見せながら関われる人間がひと地域に最低2人はいないと厳しいかなと思いますね。それから外部の協力者の存在も重要です。長崎ではアミュプラザさんに出店させていただいているんですけど、そちらの担当の方もこのプロジェクトにとても乗り気でいてくれて。こちらが忙しくなってやりとりが少しおろそかになっていると必ず連絡をくださるんです。「今度こういうお祭りがあるんですけどどうですか?」とか。そのような構造があって初めてコミュニティとの関わりが可能になるんですね。

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