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日本人的な感性でモノの役割を考える「MOMOSAN SHOP」

水谷桃子さん (MOMOSAN SHOP オーナー)

ロンドン北部のハックニーセントラル。あまり観光客が行かない場所ですが、そこにはロンドンのリアルな生活があり、またロンドンが抱える問題もあります。そこでショップを構える水谷桃子さんにロンドンの現状を伺いながらショップについてのお話を伺ってきました。

November 14 2016 , Interview

MOMOSAN SHOPの外観

いろいろな人の混ざりあうこの街が好きです

十数年前に学生としてロンドンに来られ、そのあとプロダクトデザイナーとして働いていた水谷桃子さん。その後、東京バイクでマネージャーやバイイングをされていましたが、自身のショップをオープンされました。ショップのお話の前に、永いロンドン生活で変化があったことなどを伺ってみました。

水谷  MOMOSAN SHOPはオープンして1年半になります。ニュービルドの状態から借りたので外見はキレイです。

-   新築だったんですね?

水谷  この建物だけが新築なんです。まわりのたてものはもう、何百年かぐらいですかね?ビクトリア時代のもあったりしますから(笑)。珍しいんですココで新築は。

-   この辺りはわりと落ち着いた雰囲気ですよね?

水谷  大きい道路側(ハックニーセントラル駅側)は殺伐としてますよ。ホントあれでもきれいになった方です。今ではキレイになって、新しい人が増えましたけど、いまだにビール片手にあるいてるおっちゃんとかいます(笑)。大通りには労働者用のフライドチキン屋さんがまだ残ってたりしてて、その隣にちょっといいピザ屋さんができたりして、新しいものがテイクオーバー(入れ替わり)してる状況ですね。ちょっと前までは大麻のにおいもしてたんですが(笑)。

-   昔はそんなエリアだったんですね?!

水谷  20年前はエッジなエリアでした。いまはそれはさらに北東へ移った感じです。ここらはもう中産階級のベッドタウンになってますね。お金のある人が多い感じになってきました。そんな人と昔の人がいて、私はその混ざりが好きなんですけどね。

-   (ロンドンは)どこも同じような状況ですね

水谷  もともとはこの辺りは労働者層が多く住んでいたのが貧困化したのですが、建物はコンサベーションエリアに指定されていて、この外見を保つようにされています。建て替えや模様替えが制限されているので、みなさんインテリアをアップグレードして住んでいます。

-   道路に停めてある車もイイクルマが多いようですね。ぐるっと見たんですが荒れた雰囲気がないです。

水谷  ジェントリフィケーション(※Gentrification:高級化・中産階級化)がすごく早久進んでます。もう今の状況では、若者が家を買えないですし、ロンドンには住めない時代になってます。ほんとにクリエイターが住みにくくなっています。

-   深刻ですね。

水谷  家賃も下手したらこの20年で10倍になってます。

-   それはかなりですね。

水谷  私はこのままいけばロンドンはつまらなくなると思っています。

MOMOSAN SHOPのオーナー

水谷  こういうお店は、作る人がいるから成り立つ商売です、なのでクリエイターがいなくなってしまうのが怖いですね。ロンドンには、ほかの都市にはないものがあるからおもしろいと思っているんですが。

-   いま、アーティストさんやクリエイターはどこに流れていってるんでしょう?

水谷  ブリストルとか他のまちに移り住んでいるみたいですね。ロンドンの多様化みたいなモノも、そこまで無くなっちゃうのかな・・・とちょっと心配してます。

-   都会らしさってそういう部分がありますよね。

水谷  やっぱり常にに「なにかしら」魅力を持っていて人がロンドンに来てると思うんですよね。そういうのが全てなくなるとは思わないけど、そこそこうまくやって成功してお金を持ってる人でないと住めなくなっているのが残念です。

-   本当にそうですね。

水谷  この前、政府がEU以外の外国人の永住権なしビザについて、年間所得で700万円くらいないとビザが下りないようになっちゃったんですよね。この調子だと、この国にいられなくなっちゃいます。2009年くらいからどんどん厳しくなっていってます。

-   それは、厳しいですね!

水谷  ロンドンで陶芸家をやっている人たちは、もうロンドンでは窯を維持できないって言ってますね。レントが高いんで。今だとニューヨークよりもロンドンが一番高い物価は高いんじゃないですか?住んでいれば、食事に関して家で作って食べる分には安くしようとしたらできるけど、外で食べると高くつきます。今や、10ポンド以下じゃまとものが食べられません。美味しいとかじゃないですよ?「まともな」です。

-   10ポンドあれば、日本じゃかなり豪勢にいけますね(笑)

人の魅力が作品の魅力です。モノの裏にあるストーリー性が大切です。

MOMOSAN SHOPで扱っているものについて、水谷さんが考えていること。

MOMOSAN SHOPの商品

MOMOSAN SHOPの商品

-   こちらの商品はどういった基準でセレクトしているんですか?

水谷  日本のモノでもこちらのモノでも、私が「いいな」「欲しい」と思えばどこのものでも売っています。大事なのはモノの裏にあるストーリー性です。誰がどうやって作っているのか、どういうこだわりがあるのか、『人の魅力=作品の魅力』に繋がっています。

-   お店の商品セレクトには何かコンセプトがあったりしますか?

水谷  昔はもっと、なんだろな「多様性」?について考えたりして選んでいました。それは、一つの役割のためモノを全然別のカルチャーに落とし込んだ時に別の意味を持つというのがあって、例えばわかりやすいものだとドイツの「ザワークラウト」を漬ける甕があって、私がお漬物をつけるのにちょうどいいんで使っていて(笑)、およそ、そういうことなんですが。

-   なるほど。

水谷  世界中には違う形や違う作りのモノがあって、使い方は使う人のアタマの使い方かなぁって。「ザワークラウトポット」だけどそれ以上の役目を与えるとかそんな感じです。

-   そうですよね。わざわざ漬物の甕を日本から取り寄せるのもね(笑)

水谷  外国人としてイギリスに住んでいるのが長いので、料理するのに日本酒はないけどワインで代用とか(笑)。日本でつくるのとは同じモノにはならないけど、ソレはソレでおもしろいと思っています。

-   お客さん側の見え方や感じ方としてはどうなんでしょう?

水谷  お客さんには大抵「ジャパニーズ・ショップねっ?」て言われますけど、飾ってるモノは日本製のモノはないんですよね(笑)。つまり、それはモノを選ぶ時にその要素があるのかなと。『ジャパニーズ・ショップ』ではないけど、ジャパニーズが選ぶモノに何かしらそういう要素があるのかなと(笑)。

-   えっ? 日本のモノじゃないんですね? でも陶器なんてまるで「備前焼」ですよね?

水谷  いえ、これは『備前焼』でなく『コッツウォルズ』なんです。 イギリスで200年以上続く窯元です。バーナード・リーチ(※Bernard Howell Leach  1887-1979 日本で陶芸を学び、柳宗悦と親交があった)さんという方がいて日本と縁の深い窯元です。

-   商品はもっと増やすとかはないんですか?

水谷  ボリュームを増やすと来てくれる機会が増えるだろうとは思いますね。日本のモノも服も実はもっと置きたいです。買ってくると見せたいから置くのですけど、スペース的に。ぎゅうぎゅうになるのがダメかなと思っていて。そういう風にならずにもっと置けるアイデアはないですかね(笑)。私がやるとごちゃごちゃになるんですよね。性格なんでしょうか。私の家もごちゃごちゃしてるし。何もないと『禅』な雰囲気なんですけどね。

- お客さんはそういったものを期待してるんでしょうか?

水谷  お店によってはそうかもしれないですね。「日本人らしい」「ちいさいもの」「禅的なモノ」がステレオタイプにはなってますね。

MOMOSAN SHOPの商品

インタビューの中に出てきた『備前焼』でなく『コッツウォルズ』の焼き物は棚の最上段に陳列してあるモノ。素人のワタクシの目には、どう見ても備前としか見えなかったです。写真の左下にあるのがドイツ製の「ザワークラウトポット」。飛び出ている取っ手のついた蓋の部分は重しになっていてこのまま漬物石を置かなくても漬物がつかるスグレモノ。

MOMOSAN SHOPの商品

ぱっと見た感じ日本的に感じますが、日本製のモノはないのだそうです。でもお客さんは『ジャパニーズ・ショップ』に感じるらしい。

コミュニティーがなくなっていくように感じます

店先でお話しているのは、ロンドン在住のアーティスト向井さん。MOMOSAN SHOPにはこうして話をしていく人が多い。今のようになる前から住んでいるクリエイターはたいてい知り合い。向井さんはオランダ人の奥さんと一緒に「スタディ・オー・ポータブル(Study O Portable)」を主宰しています。

MOMOSAN SHOPのオーナー

水谷  通りを自転車で過ぎていく友達が手を振ってくるとか、そういうのがまだ残っています。でも、だんだんとコミュニティーがなくなってるように感じます。

-   それは寂しいですね。

水谷  いまではレントが上がりすぎて資本力のある店が入っちゃって、まるでウエストエンドみたいになってるように感じますね。

-   それは、みんな同じように言われますね。

水谷  それでも、ここにいると友人に会えるんです。お茶まで飲んでいきますよ(笑)。店の前のベンチに腰かけて少し話し込むんです。そういうのが楽しいです。この店には空調がないんです。まぁ、ロンドンのこの手の店ではなかなかなかったりするんですが、この店は特に窓が大きいので夏場はサウナ状態になるんで中にいられないっていうのもあるんですが(笑)。

-   サウナって(笑)。ちょっと大変ですね。

-   ずっとインタビューしてる間も挨拶するのが多いですね?

水谷  みんな友達です。こっち(ロンドン)に来てわかったんですが、お金を考えて考えて使う所があります。日本だとメディアに動かされる(煽られる)感じがあるじゃないですか?それがないですね。何度も通って、本当にじっくり考えられます。それで仲良くなったりするんですが(笑)。作家が気にいれば高くても買うんです。自分の意志が強いですね。

-   そういう人たちとコミュニティーができてるんですね。日本のショップの朝の風景と随分違いますね。

水谷  そうですか(笑)。毎日こんな感じです。

MOMOSAN SHOPのオーナー

こちらの“MIOMOSAN SHOP”の最寄駅はハックニーセントラル駅になります。普通は観光客が行かないところです。その分リアルな生活に近いロンドンの街の風景が見られました。見た目にはそんなに変わっていないのですが、住民が徐々に変化していることやコミュニティーを形成していたアーティストやクリエイターが流出していることは街の面白さに大きな変化をもたらせているようです。ロンドンについては中心部での大規模な開発が進行していること、地価が高騰して今までの住民が住めなくなっていることで『ロンドンらしい』と思ってきたことが、なくなりつつあるようです。

Text: Koichiro Sato
Picture: Chihaya Kaminokawa

Data

Data

MOMOSAN SHOP

79a Wilton Way, London E8 1BS United Kingdom
+44 20 7249 4989
URL:www.momosanshop.com

Data

Study O Portable

Postal Address: 71a Greenleaf Road London E17 6QW United Kingdom
Studio Address: Zero Belfast Road London N16 6UH United Kingdom
information@studyoportable.com
URL:studyoportable.com

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