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ジェントリフィケーションが進行する“ハックニー・セントラル”

ロンドン・オーバーグラウンド(London Overground)のノースロンドン線のハックニーセントラル駅。あんまり観光に来るようなところではないんですが、リアルなロンドンの生活があります。空前の土地バブルのロンドンの好景気を反映してジェントリフィケーションが進行しています。コンサベーションエリアに指定されている古い街並みはどんな風になっているのでしょうか?

November 15 2016 , Research

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ロンドン・オーバーグラウンド(London Overground)のノースロンドン線のハックニーセントラル駅。あんまり観光に来るようなところではないんですが、バーバリーのアウトレットがあったりして案外日本人も来てるのかもしれないですね。今から紹介する方向は反対側なんですが(笑)。今回、街をリサーチしたのはハックニーセントラル駅から西へ伸びるウィルトンウェイ(Wilton Way)にあたり。

ロンドンに取材するにあたってロンドン生まれのダンカン・ショットン氏にもいろいろお話は聞いていたんですが、ダンカン氏のお母さんはハックニー生まれなんだそうですが、絶対ハックニーには住みたくないと言っていた街なんだそうです。今ではすっかりきれいな街になっているのですが、その世代の人たちにはそういう街になっているんでしょうね。およそ第二次世界大戦で空襲があって町を破壊されたところでは、スラムやバラックや非合法な商売で都市の健全性は失われたといったところでしょうか。

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しかしながら、ロンドンは空前のバブル状態となっており中心部はインテリジェントビルがばんばん立ち、中心部に近い街では交通網の再整備もあり『ジェントリフィケーション(Gentrification)』が進んでいるという状況です。ジェントリフィケーション(Gentrification)とは、ウィキペディアによれば

 

都市において比較的貧困な層が多く住む中下層地域(インナーシティなど都心付近の住宅地区)に、比較的豊かな人々が流入し、地域の経済・社会・住民構成が変化する都市再開発現象である。高級化、中産階級化という訳語があてられる。これにより、貧困地域の家賃・地価の相場が上がり、それまで暮らしていた人々が、立ち退きなどによって住居を失ったり、それまでの地域コミュニティが失われたりすることが問題となる。

ジェントリフィケーションが起こるには、いくつかの要因が考えられる。国や市などによって再開発計画が進められ、土地の価格が上昇する場合もあれば、廃屋などが多い地域に近隣地域から中産階級が流入し、地域経済の構成要素が変化する場合などもある。

ジェントリフィケーションの結果、その地域の地価等が上昇し犯罪率が下がるなど、治安が向上することもある。しかし、このために家賃や税金が上がるなどして、それまで居住していた人々が居住できなくなり、地域のコミュニティが崩壊することが問題となる。

 

という説明になっています。

 

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アムハーストロード(Amhurst Rd)の風景。この道路の突き当りが一枚目の写真の交差点のところ。歩道もきれいになって右手にあるような新しい建物もできたりしています。ちょうど過渡期のようなタイミングで古くからいる人と新しく住み始めた人が混在しているような雰囲気。撮影の時間が11時くらいということもあって、お勤めの人はすでにいないような時間帯で、わりとお年寄りが多く出歩いている時間帯でした。

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先日のインタビュー記事の“MOMOSAN SHOP”がある通り、ウィルトンウェイ(Wilton Way)。まるでスラムのようだった街は一転してドイツ車が多く駐車されるようなエリアに。そんな中にも尖った感性の店が潜んでいます。

 

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この通りに二つあるカフェの一つ『The Wiltonway Cafe』。

もともとあった店舗のエクステリアをそのまま使った『The Wiltonway Cafe』、年季の入ったエクステリアには手を加えない感覚はコスト感覚に見合ったやりかたでありながら、街の記憶もそのまま引き継ぐ素敵な手法だと思います。それができるのも元の店構えがオーセンティックで歴史を持ったものだからということですが。日本の店舗だと看板建築のようになっているので、できないですけどね(笑)。

 

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そのインテリアはラフで自由で痛快。椅子らしいモンはなくて基本ベンチシート(でも板張り)。向かい合わせにした席はなく壁に沿ったベンチシートからカウンターに向いてコーヒーを飲む感じ。狭いからっていうのも理由ですが、そんな感じじゃなく、使い勝手の一番いいとこで収まった感じでまとまっています。

 

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店内の座席数に比べてスタッフの数が多い(その日は4人いた!)のは、いったいどうなってんの?的な感じ。スタッフもキャラクターが立っててみても楽しいし、和やかな談笑が心地よし。早口でくせの強いアクセントだったし何を喋ってるのかさっぱりでしたが(笑)。

 

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実はここは『ロンドン・フィールズ・ラジオ(London Fields Radio)』が運営しているカフェで、スタジオも兼ねているあたりが笑えます。

 

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トッパーズ・オブ・ハックニー(Toppers of Hackney)という名前の理容室。デザイン的にはなんてことはないものなんですが、部分的にすごい!

 

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何がかというと店内を飾る額縁の中の絵(エッチングか?)がすべて医学解剖の臓器や骨のスケッチ。個人的には大変興味深いテーマなんですが、果たしてこんな感じで一般的に大丈夫なのかと(笑)。

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ちょっとしたスーパーマーケットがあったりします。よくあるグロサリーに一部野菜などの生鮮が入ったもの。肉とか魚の類は冷凍だけ。

 

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もう一軒あるカフェ“Footnote”人通りが少ない時間帯で、しかも表通りではないのですがお客さんの入りはいいですね。それでも、ほとんどの人がマックブックで作業中という世界的なパターン(笑)。

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で、インタビュー記事も載せさせていただいた『MOMOSANSHOP』。

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そして、ウィルトンウェイ(Wilton Way)の一本北側を走る、グラハムロード(Graham Rd)。こちらはバスが通る道で結構賑やか。それでも商店が並んでいるような状況ではなくベッドタウン的な様子。きっちりコンサベーションエリア(景観規制地域)に指定されているので古い街並みが保存されています。ショップの看板が出せないとか、パラボラアンテナの設置も許可されないとか、あとエアコン特に室外機が美観を損ねるとかで取り付けられない状況。ちなみにMOMOSAN SHOPもエアコンはついていません。窓が大きいので夏場はサウナのような暑いとか。

リスティッド・ビルディングにまで指定されると内装まで手を付けられないというオソロシイ法律(笑)。

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ジェントリフィケーションが進んでいる状況を見てきたのですが、ロンドンの街が景気がよく中産階級が割とサラリーをもらえているといういい状況を示していると考えれば、全体的にはいいことではないかとも思うのです。景気が悪くて街が活性化せずに停滞している状況では新しい動きも生まれなかったとも考えられます。こうした古い建物も手入れできずに荒んだ状況であったものがグラフィティーもきれいに落とされキレイな街並みを取り戻すのも悪くはないことであろうと思います。好景気がコンサベーションエリアの考え方をよい方に回しているともいえます。

景観については日本の街は無頓着なところが多く、よっぽど寺社や旧跡でなければ歴史的建築物であっても経済的な効率から壊すことを厭わないですね。個人としては壊したくないと思う一方、会社的な経済至上主義は平気で壊すところが嫌な部分でもあります。地震に対する耐震基準などで安全を担保するためとか、地価に対して経済性を確保するとか理由はいろいろありますが、親しみ馴染んできた景色が失われていくのは残念な部分が多いです。日本においては自由な住宅のおかげで面白い街並みになるところもあれば、安普請の建売住宅の画一的な家が並ぶような退屈な街もあります。街の景観は景気が作るような部分は否めません。

その一方で、ロンドンの街からエッジが喪失しつつある件については微妙です。アーティストの表現がグラフィティだけにあるわけではないので、ソレがあるからいいとは思わないんですが、まったくないのもさびしいものです。でもそうした表現は『ウラ』的な衝動を滲ませているものであって、あくまでサブカルチャーの指標の様なものであると思います。ここでしかできない活動とは思わないし、ここから移動したエッジはほかのどこかに発生するものでしょう。破壊的なものや暴力的な表現は、その生活の安定が表現の衝動を抑え込むとすれば、アートの方向性として上品なエレガントなものに変わるかもしれないと思います。

 

Text: Koichiro Sato
Picture: Koichiro Sato

Data

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The Wilton Way Cafe

63 Wilton Way, London E8 1BG, England
+44 7793 754776

Data

London Fields Radio

63 Wilton Way, London E8 1BG, England
+44 7793 754776
URL:www.londonfieldsradio.co.uk

Data

MOMOSAN SHOP

79a Wilton Way, London E8 1BS
+44 20 7249 4989
URL:www.momosanshop.com

Data

Footnote

51 Wilton Way, London E8 1BG
+44 7584 253247
URL:www.footnote.london

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