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「必要」に気づき、「形(かたち)」にする “ALL YOURS”

多くのファッションブランドが行き詰まりを見せる中、機能性でも低価格化でもファッション性でもなく、生活シーンを提案することで、洋服の需要を新たに作り出そうとするオールユアーズ。単なる機能服ではなく「生活の1シーン」を切り取り、そこに必要な機能を服に持たせた「ライフスペックウェア」である。

April 5 2017 , Shop Report

洋服業界は消費低迷のあおりを受けて、売り上げ規模が縮小し続けています。バブル崩壊以降、それまでの売り方では消費者は動かなくなりました。可処分所得が伸び悩んでいるという背景はあるものの理由はそれだけではありません。トレンドを小刻みに変えて、それをファッション雑誌とタイアップして大々的にブームを起こすという手法が過去のものになってしまい効力をほとんど発揮しなくなってしまいました。そうなると業界はこぞって価格競争の姿勢を強めましたが、そこで勝ち残れるのはほんの一握りのブランドで残り大多数は負け組となってもがき苦しんでいます。

今こそ新しい売り方、新しい商品が望まれているのに、旧大手アパレル各社は保守的になる一方でそれがさらに消費を低迷させているという状況です。

 

今回は新しい商品や売り方に挑戦する小規模ブランドを2回に分けてご紹介したいと思います。

 

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ぼくが、ブランドの立ち上げ時から知っている「オールユアーズ」。昨年、サイバーエージェントが主催するクラウドファンディング「マクアケ」でメジャーデビューを飾り、広くメディアに採り上げられた。クラウドファンディングでのデビュー商品は撥水パーカだった。単に「撥水パーカ」と言葉だけで聞くと目新しさはまるでない。

例えば、ユニクロでロングセラー商品として発売されているポケッタブルパーカも撥水機能があるし、ポリエステルやナイロンなどの合繊織物を使った撥水パーカは西友でさえ販売している。業界に少し詳しい人なら合繊織物の撥水パーカというとどんな商品なのかイメージできるが、詳しくない人のために解説すると、いわば薄手のフード付きレインコートをイメージしてもらいたい。ああいう素材が合繊織物なのである。

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オールユアーズがマクアケで世に送り出したのは、そういうレインコート然とした商品ではない。業界では、スエットパーカと呼ばれる商品だ。一般的にアメリカンカジュアル、スポーツテイストカジュアルに分類される商品で、業界では「裏毛」素材と呼ばれる生地を使用している。トレーナーと同じ生地だと考えてもらえばわかりやすいだろう。

この生地は編み物である。編み物は織物と比べて伸縮性があって吸水性が高い。同じ編み物であるTシャツを思い浮かべていただければ理解できるだろう。元来そういう性質の生地だから撥水とは真逆になる。

しかし、日常的なカジュアルということになれば、レインコート然とした合繊パーカよりもスエットパーカの方が着用者は多い。また合繊パーカはどうしても「アウター(外衣)」という性質しかないのに対して、スエットパーカはアウターだけではなく「インナー(内衣)」「ホームウェア」という性質も兼ね備えている。このため、スエットパーカに撥水性を持たせる方が活用シーンは増える。

だから撥水スエットパーカは多くの人々から好評を得て、マクアケでは軽々と目標予算をクリアした。「オールユアーズ」ではこの撥水パーカに代表されるような機能性に特化した服を次々と世に送り出している。

 

 

現在、もっとも引き合いが多いのがこの撥水パーカのほか、早く乾く「ファストパス」と通常よりもストレッチ性の高い「ハイキック」である。ファストパスは吸水速乾素材を使用したカジュアルウェア類であり、通常、吸水速乾素材というと汗対策にもってこいだと考えられているため、夏向け素材として業界では取り扱われている。しかし、オールユアーズでは通年で売れており、その理由について、オールユアーズの商品企画を担当する原康人さんは「汗が早く乾くということは、洗濯しても早く乾くということです。そのため、都会で一人暮らしをする人たちから重宝がられています」と説明する。

都会で一人暮らしをする人の多くは、洗濯物を部屋干しする。部屋干しすると外で干すよりも乾燥するまでに時間がかかる。夏場はそれでも高温なので部屋干しでもある程度の時間をかければ乾くが、真冬は気温が低いため部屋干しではなかなか乾かない。それを解消するのが吸水速乾素材だということになる。

原さんは「吸水速乾素材は夏ではなく、むしろ冬に適した素材だといえます。うちのファストパスシリーズは真冬の部屋干しでも3時間で乾きます」と説明する。これは吸水速乾素材の新しい切り口であり、物の見方を変えることで機能性を一切変えることなく新たな需要が創設できるということになる。

また、ハイキックはトルコのデニム生地工場ISKO社の技術を利用したもので、通常のストレッチデニムよりも強力なキックバック性を生地に与えており、スポーツウェアのような動きやすさを実現した。これも機能性を重視しているが「新たな切り口」ではなく、現在の機能をさらに強化した取り組みといえる。

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オールユアーズは大手チェーン店や大手メーカーで営業を担当した木村昌史さんと、大手メーカーや大手チェーン店、大手素材メーカーでの商品企画を経験した原康人さんが設立し、そこに大手チェーン店出身の高橋裕輔さんが合流した。木村さんが営業と卸売先店舗の開拓を、原さんが商品企画を担当する。

二人は現在のファッションビジネスの在り方に疑問を持ち、ファッション性や一過性のトレンドで売ることは限界に来ていると感じ、ブランド設立に至った。通常、メディアではオールユアーズを「機能服」として紹介するが、展開している本人たちからすると「うちは単なる機能服ではない」と口をそろえる。

生活の1シーンを切り取り、そこに必要な機能を服に持たせた「ライフスペックウェア」だというのがオールユアーズとしての公式見解となる。

そして木村さんはそのライフスペックウェアを広めるという観点から営業活動を行っており、自ら「ライフスペックウェア伝道師」と名乗って精力的に飛び回っている。

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原さんは「各商品はあえて一つだけの機能をクローズアップして打ち出しています。実はそれぞれの商品は複数の機能性を持っているのですが、それをすべて打ち出すと焦点がぼやけてしまいます」という。現在の衣料品不況にはさまざまな原因が考えられているが、情報の伝え方・商品の見せ方が間違っていて消費者に響かないという部分もある。

18年くらい前に、形態安定加工のワイシャツが一大ブームとなったことがある。アイロンがけ不要のワイシャツで爆発的なヒットを記録した。しかし、3年くらいすると商品が行き渡ってしまう。そのときに各ワイシャツメーカーがとった行動は、新機能を積み上げることだった。

形態安定加工はそのままに、毎年、やれ防臭機能だ、抗菌機能だ、と次々と新機能を積み上げていき、最終的には形態安定加工のほか、抗菌・消臭・防汚・UVカット・ビタミンC加工と5つもの機能性を積み上げたワイシャツが出来上がったが、結果的にその売れ行きは形態安定加工ブーム当初を越えることはなく、反対に多くのワイシャツメーカーが倒産した。

結果的に現在も残っているのは形態安定加工くらいであり、それ以外の加工はほとんど消費者からは必要と感じられていなかったのである。

多機能を打ち出すことは通常、商品の「付加価値」を高めるととらえられるが、実はそれほどの価値だとは消費者は感じていない。原さんはここに注目してあえて一つだけの機能を強く打ち出している。

 

多くのファッションブランドが行き詰まりを見せる中、機能性でも低価格化でもファッション性でもなく、生活シーンを提案することで、洋服の需要を新たに作り出そうとするオールユアーズの姿勢は、かつてのウォークマンやiPhoneが作り出されたときの姿勢と類似しているといえる。今後、洋服の新たなる需要が作り出せることができるかどうかに期待しつつ見守りたい。

Text: Minami Mitsuhiro
Picture: Mitsuhiro Minami

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株式会社オールユアーズ

住所:
〒154-0004 東京都世田谷区太子堂4-4-5 三軒茶屋 リリエンハイム1004
TEL:03-6413-8455 公式サイト:www.allyours.jp

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