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一日3組の予約制のショップ。渋谷区恵比寿の「ガレージエデン」

今こそ新しい売り方、新しい商品が望まれているのに、旧大手アパレル各社は保守的になる一方でそれがさらに消費を低迷させているという状況下でこんな売り方が!

May 11 2017 , Shop Report

洋服業界は消費低迷のあおりを受けて、売り上げ規模が縮小し続けています。バブル崩壊以降、それまでの売り方では消費者は動かなくなりました。可処分所得が伸び悩んでいるという背景はあるものの理由はそれだけではありません。トレンドを小刻みに変えて、それをファッション雑誌とタイアップして大々的にブームを起こすという手法が過去のものになってしまい効力をほとんど発揮しなくなってしまいました。そうなると業界はこぞって価格競争の姿勢を強めましたが、そこで勝ち残れるのはほんの一握りのブランドで残り大多数は負け組となってもがき苦しんでいます。

今こそ新しい売り方、新しい商品が望まれているのに、旧大手アパレル各社は保守的になる一方でそれがさらに消費を低迷させているという状況です。

 

今回は新しい商品や売り方に挑戦する小規模ブランドを2回に分けてご紹介したいと思います。後編は渋谷区恵比寿のショップ「ガレージエデン」です。

ガレージエデン1

 

ぼくがそのショップに興味を持ったのは「来店は一日3組の予約制で」と謳われた呼び込み文句が目に留まったからだ。通常の企業が運営するショップではこんな悠長な運営はできない。前年実績と販売ノルマに追われるからだ。家賃の高い都心路面店や、都心駅ビル・都心百貨店内のテナント出店ではとてもではないが毎月の家賃さえ支払えるかどうか怪しい。仮に1日3組のお客がすべて5万円分の買い物をしてくれたとして、1カ月の売上高は450万円にしかならない。1日3組のお客が全員買ってくれないこともあるだろうし、そもそも1組しかお客が来ない日もあるだろうから、地価の高い都心で営業を続けるのは厳しい。

じゃあどのようにして運営しているのかということを聞いてみたくなった。そんなことを考えていたらたまたま東京に行く機会があり、それに合わせてアポイントを取った。

店主は浦野貴弘さん。一人で店を運営し、一人で接客しているらしい。オリジナルブランドのデザイナーも兼ねているとのこと。ウェブサイトではご自身がモデルとなって洋服を着ておられる。出たがりではなく、人間が着用する方がその服の見栄えが分かりやすいからだ。

ウェブサイトでお姿を拝見する限りにおいては、ロン毛で細身。なかなか精悍な顔立ちをしておられ何やらシャープな雰囲気が漂う。見ず知らずのオッサンが「東京に行く用事が出来たのでお会いしたいです」なんていって、冷たく断られたらどうしようかと恐る恐るメールを送ってみると、意外に明るく「ご来店、お待ちしていまーす」みたいな返事が来てホッとした。

ガレージエデン5

 

そんなわけで東京へ行き、さっそく店を訪ねた。渋谷区恵比寿という住所から関西の田舎者は渋谷の都心みたいなイメージを描いていた。あんな都心でどうやって店を何年も維持しているのかとそればかりが気になった。

ぼくは本来、極度の方向音痴で、初めて出向く場所は地図を見ながら歩いても必ず迷う。しかし近年、スマホに地図アプリが掲載されるようになってから迷子になる確率が各段に減った。今回ももちろん地図アプリを頼りに目的地まで歩いた。

歩いていくと、想像していた渋谷や恵比寿の都心ではなくどんどんと住宅地になってくる。田舎みたいな田んぼや畑はないが、それこそそこら辺の住宅地と変わらない様子であり、関西の田舎者にとっては意外な風景だった。

地図アプリが指し示す場所に着いたが看板も出ていないのでどこにあるのかがわからない。5分ほど周りをグルグルしてみたが見つからないので、思い余って浦野さんに電話をしてみると、斜め後ろの家の地下から手を振る姿が見えた。

文字通りの「隠れ家」的ショップだった。

 

この店ではオリジナルブランド「 THEE OLD CIRCUS ( ジ・オールド・サーカス )」「 OLD GT ( オールド ジィーティ )」の他、他社ブランド「INCARNATION ( インカネーション )」を取扱っている。浦野さんは、オリジナルブランドのデザインとセレクトの仕入れと店主と販売員の4役をこなしている。オリジナルブランドは毎シーズン、10~20店ほどの専門店に卸売りも行っている。

店内は薄暗いが、整然としており、商品の陳列量はそれほど多くない。浦野さんが衣料品業界に入ったのは、故郷である長野県のセレクトショップで働きだしてからのことで、それまではほとんど無縁だったという。

店で扱う洋服と自社ブランドのコンセプトは「細く、長く(背が高く)見える」こと。今でこそ細身の浦野さんだが、高校時代はラグビー部に所属しておりかなりごつい体格をしていたそうだ。今の外見からは信じられないが、「リーバイスのビッグサイズのジーンズがピチピチになるほどゴツイ体型をしていました」と浦野さんは話す。

ガレージエデン2

ある時、顎を骨折ししばらく流動食で過ごしたことがきっかけとなって痩せた。浦野さんは「痩せてみるといろいろなブランドの洋服が着られるようになり、初めてファッションって楽しいと思い始めました」と振り返る。

そこからファッションに目覚め、当時憧れだったリーバイスのブーツカットジーンズ「517」を愛用するようになった。

現在でもオリジナルブランドのパンツはブーツカットが基本だ。白シャツとブーツカットジーンズ、ワークブーツがブランドのキーアイテムとなる。

ガレージエデン4

 

デザインは自己流、パターンは外注で生産管理は自社スタッフに任せている。あえてPRはしないが、自社ブランド製品はすべて日本製だ。

「うちは小ロットで細々やっているブランドなので小ロット生産が対応できる国内工場を使っています。洋服は着てもらってどう見えるか?どう楽しいと思ってもらうか?が重要であり、何処産とか何国製ということは重要だと思っていないのであえて日本製をPRしてきませんでした」。

以前からの疑問である「一日に3組予約のみ」という接客形態について尋ねてみると、「人を使うことが下手くそで失敗したことがあり、そこから一人でやるようになりました。一人でやっているとたくさんのお客さんが来てくださると対応できませんから、3組限定ということにしました。お気づきのように売上高はそんなに多くはないです(笑)が、一人で細々やれている間はそれで良いのかなと思っています。そういうスタイルで大量生産大量販売の低価格ブランドとの独自化を模索しているという部分もあります」との答えが返ってきた。

ガレージエデン3

大手ブランドに比べると少ない顧客数だが、その分付き合いは密になる。夜中でも浦野さんの携帯電話には顧客からの問い合わせや質問の電話がかかってくる。浦野さんは顧客のことを「ファミリー」と呼んで夜中でも丁寧に対応する。傍から見ていると、めんどくさいと感じないでもないが、「これがうちなりの大手との差別化です」という浦野さんのやり方は一つの正解であるのではないかとも感じる。

オリジナルブランドはできるだけ細身であることに徹しているが、たまにいつもよりややゆとりのあるシルエットを作ってしまうこともある。そうした時には「顧客から『今回の商品はちょっと大きすぎるんじゃないの?』というクレームの電話が来ることもあります」という。

通常のブランドだと「小さすぎる」というクレームが来ることはあっても「ちょっとゆとりがある」というクレームが来ることはまずない。それだけ、細身に特化した服を提案し、細身好きというニッチな客層をつかんでいるブランドだからこそ起きる珍現象であり、通常の大手ブランドにはない顧客との一体感がある。

ブランド間の同質化が問題になる業界においては、ここまでの独自化を打ち出すことは解決策の一つだといえる。

 

今後について尋ねてみると、「あと何十年もこのブランドを続けられるかどうか自信はありませんが、国内の製造業者と契約を結んでオーダー生産的なことを強化したいと思っています。実際に縫製職人みたいな人たちと徐々に契約をし始めており、靴やTシャツ、レザージャケットなどから開始していきます」という。

低価格化と同質化に悩む大手アパレルブランドとは一線を画した売り方を続けるこんなブランドがあっても良いのではないだろうか。

Text: Mitsuhiro Minami
Picture: Mitsuhiro Minami

Shop Data

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Garage Eden

住所:
東京都渋谷区恵比寿2丁目32−23
TEL:03-6277-2947 公式サイト:www.circus-hp.com

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