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服好きによる服好きのためのセレクトショップ「Of the Shop」

月に2日間だけ、厳選された5点だけを販売するセレクトショップが渋谷にある。雑居ビルの1室にあるその店では、好きな服の話で盛り上がるゆっくりとした時間が流れる。

June 5 2017 , Shop Report

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2020年の東京オリンピックに向けて、あちらこちらで再開発が進む中、前回のオリンピックの頃に建てられたという東京・渋谷のある雑居ビル。もちろんエレベーターもない4階まで、長い階段を上がっていった先にあるのがセレクトショップ「Of the Shop(オブ ザ ショップ)」だ。

オープンしたのは2016年8月。ギャラリーであるこの場所で、毎月第2、第4水曜の2日間だけ営業する。しかも、取り扱う商品は5点だけ。5つのブランドから1点だけを選び、店に並べるという。

 

「ここはギャラリーなので、営業日のたびに設営から撤収までを行います。その度、沢山の商品を並べることが難しかったことが、この店のコンセプトにも繋がっていくのです」とそんな裏事情を教えてくれたのは、この店のディレクター的な存在である吉﨑結一さん。

そんな前提があることを上手く解釈し、厳選した5ブランドから1品ずつセレクトした商品を、まるで高級寿司屋の『本日のおすすめ』の様に並べている。

店内を見渡すとシンプルで清潔感がある。ドアには暖簾が掛けられ、吉﨑さんと店長の松尾翼さんが身につけているのは前掛け。これも寿司職人をイメージしている。寿司屋らしく、本日のおすすめを紹介する“お品書き”も用意されている。ブランドのセレクトやお品書きを書くのは松尾さんの仕事だ。

「ビルの4階までわざわざ階段で上がってくるのには何かしらの目的や、見たいブランドがあるからだと思います。商品とお品書きを見て、目的以外のブランドも知っていただきたいなと思っています」(松尾さん)

 

この日、Of the Shopに並んでいた商品は、今回初めて取り扱うブランド「osakentaro」のレースシャツワンピース、「PITECAN THROPUS」のオーロラと石ころのワンピース、「sneeuw」のリメイクカーディガン、「non」の鉱石の耳飾り、「Sur」のサープラスネックレスの5点。

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「お預かりする商品は基本的に1点だけなので、ブランドには“そのブランドのアイデンティティや、やりたいことが伝わるもの”をお願いしています」(松尾さん)

本来ならば、ブランドの世界観、個性や良さを表現するためにアイテムは複数点見せた方が良いのかもしれないが、そこはあえて1つのアイテムに絞り、そのアイテムからそのブランドの特徴や魅力を掘り下げ、伝えていくことに集中するところが、この店の面白さであり、興味をくすぐるポイントでもあるなと感じた。

セレクトするブランドは基本的に足で探す。展示会やショップを見て回り、商品を見て、ブランドへアプローチし、デザイナーと話してから決める。また、月に2日間の営業で1点しか扱うことができないという店のシステム上、デザイナー側への理解も必要になる。

「これまで扱ってきたブランドは大体がこの店の為だけに1点ものを作ってもらっています。実際に売れ行きが良い商品もこの店のために作った1点ものが多いです。ブランド側にとっては面倒かもしれませんが、デザイナーさんの理解というか、この店のシステムを面白がって活用していただけるようなブランドが集まっています」(吉﨑さん)

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最近ではバイヤーがこの店を訪れ、ブランドを紹介するということもあり、「プレスルームとしての機能も果たしているのでは」と二人は感じているようだ。ブランド側も新作のテスト販売やリメイクアイテムを販売するなど、「Of the Shop」を有効活用している。

 

元々「Of the shop」は12年からスタートしたプロジェクトで、拠点を持たず、百貨店やファッションビル、ギャラリーなどで、移動型ショップを運営していた。店名も「例えば『Flower of the shop』とすれば、花屋とコラボしたショップになれるし、本屋と組んで何かするときは『Book of the shop』とすればいいと考えて、主語を取って『Of the Shop』としました。何かと組んでやることで、新しいコミュニケーションが生まれるのではないかと考えました」と吉﨑さん。

当時からブランド数は絞っていたものの、中心となる3つのブランドから、好みによって派生するニアブランドを集め、5~10ブランドを扱っていた。特徴として、過去のアーカイブやシーズン以外の商品を品揃え。一部、サンプルも販売していた。その為、ブランドのファンから見たら希少価値の高いショップであった。

「目的のブランドがある方も、ない方も、この店では友達を紹介する感覚で『このブランド好きなら、こっちも好きだと思うよ』と紹介していく接客をしていました。それで2~3ブランドをお買い上げしてもらえると『成功した!』と。この店がある意味を感じることができました」(吉﨑さん)

確かにいくらSNSが発達したとは言え、ブランドがいくら告知を出しても即売上げに繋がらないのが現実だ。そのブランドとお客さまの間を繋いでいくのが、本当のセレクトショップの在り方ではないだろうか。

 

 

そして、このプロジェクトを継続していくうちに、よりお客さまとダイレクトな付き合いができる場所を作りたいと考え始めた。商業施設やギャラリーの様に様々な理由で人が集まる場所ではなく、拠点を作り、ゆっくりお客さまを迎える空間ということで誕生したのがこの「Of the Shop」である。

先にも記述したが、バイヤーにブランドを紹介したり、プレスルームの様に感じているブランドがいたり、と拠点ができたことでショップ以外の面があることを感じるようになった二人は、今後この店でイベントの開催やリアルメディアとして機能させたいと考えている。その手始めとして、4/26(水)には「sneeuw」デザイナーの雪浦聖子さんをゲストにトークイベントを開催した。

オープン以来初となるポップアップショップを5/3(水)~14(日)に池袋パルコで久々に行った。オープンから約10か月間のまとめを見せるような展開。

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一部では「服が売れない」と悲観する声も聞こえるが、ここでは全く関係ない。服が好きな人たちが店を作り、服が好きな人が集い、気に入ったものがあれば買っていくだけだ。それは正に趣味の世界と同じだろう。

「街の通りを歩いていて見つけられる様な場所ではないので、どこかでこの店を知ってくださったお客さましか来店されません。折角4階まで上がってきてくださったからには、私たちからも丁寧にお話しさせていただきますし、お客さまも1~2時間ほどは滞在されていかれます」(松尾さん)

古びたビルの階段は踏み面が狭く、何度となく「踏み外しそうで怖いな…」と個人的に思っていたが、それでも見てみたいものがあるから4階まで上がってしまう。恐らく同じように感じながらも、4階まで上がっていく人たちが他にもいるのである。趣味というのはそういうものだ。

Text: Kaori Tomabechi
Picture: Kaori Tomabechi

Shop Data

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Of the Shop

住所:
東京都渋谷区桜丘町17-9 第二昭和ビル401 (※営業は、第2 , 第4水曜日15:00 - 21:00)
TEL: 公式サイト:www.oftheshop.com

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